バレリアンに睡眠改善の効果はある?10の研究データから検証

公開日:2022/05/17
更新日:2022/05/16

バレリアン ハーブ

”自然界のバリウム”とも呼ばれる「バレリアン」は、利尿や去痰のほか、不安や不眠の改善に役立つと言われています。
実際、世界各国で臨床試験が行なわれており、効果が科学的に認められてきているのです。
今回は10個の研究データを基にバレリアンの睡眠改善効果と、そのほかに期待されている効果を紹介します。

  • 記者 WRITERSTERON編集部
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バレリアンとは? 

睡眠の質が気になるみなさん、バレリアンをお試しになったことはありますか?

バレリアンは日本名セイヨウカノコソウという西ヨーロッパ原産の低木で、ハーブの一種です。

バレリアンの根や茎は、西洋で古くから薬草として使われてきました。

紀元1世紀のローマ時代には利尿や去たんなどの効能に関する記録があるそうですが、中世からは不安や不眠の治療薬として認識され、広く使われています。[1]

英語圏では「自然界のバリウム」と呼ばれる場合もあるそうです。

バリウムとは胃カメラのために飲む硫酸バリウムではなく、不眠症や不安障害などの治療に使われる抗不安薬ジアゼパムのアメリカの商品名。

ジアゼパムには様々な副作用があるのに対し、バレリアンは植物で副作用が少ないと評価されているようです。

バレリアンに含まれるバレリアン酸やバレリノールという成分が脳内のGABA受容体に結合することで、不眠や不安を改善する効果が得られると考えられています。[2]

GABAとは人体に自然に存在するガンマアミノ酪酸を指し、人間の脳内では、脳への刺激をブロックする抑制性の神経伝達物質です。

植物由来のバレリアンが睡眠をどの程度改善できるか、他にどんな効果があるか気になる方も多いでしょう。

そこでこの記事では10件の研究成果からバレリアンの睡眠改善効果を明らかにし、その他の効果もご紹介したいと思います。

 

バレリアンの睡眠改善効果を検証

バレリアンの睡眠改善効果については、すでに多くの臨床試験が行われています。

 

①ネスレリサーチセンターの研究者たちがバレリアンの根の抽出液の効用を調査(1982年)

128人にバレリアン抽出液とバレリアンを含まない薬液を飲ませたところ、バレリアンの抽出液を飲んだ時には入眠時間と睡眠の質が改善し、特に睡眠が不規則な人、喫煙者、寝つけない自覚のある人の睡眠の質が大きく改善しました。[3]

 

②ベルリン・フンボルト大学の研究グループが16人の不眠症患者にバレリアンを処方して効果を調査(2000年)

バレリアンを飲んだ患者たちは、徐波睡眠(ノンレム睡眠の深い眠り)に入るまでの時間が21.3分から13.5分に短縮、徐波睡眠の時間も長くなり、睡眠時間全体の8.1%から9.8%に増えました。[4]

 

③メキシコの南部生物医学研究所が20人の不眠症患者にバレリアン450mgを処方し、睡眠ポリグラフ検査で効用を検証(2001年)

バレリアンを服用すると夜中に目覚める回数が減少し、ノンレム睡眠の浅い眠り(段階1~2)の時間が短くなって睡眠の質や朝の眠気が改善。

また、目立った副作用もありませんでした。[5]

 

④ブラジル・サンパウロ連邦大学が、長期間ベンゾジアゼピンを服用してもよく眠れない患者19人を対象に臨床試験を実施(2002年)

この実験ではベンゾジアゼピンの服用を中止し、バレリアンを15日間服用させています。

患者たちの眠りにつくまでの時間には変化がなかったものの、第二段階(浅い眠り)が短くなる一方徐波睡眠(深い眠り)の時間が長くなり、自己評価にも改善が見られました。

従って、ベンゾジアゼピンの効果がない不眠症患者がバレリアンを服用すれば、苦しまずにベンゾジアゼピンをやめられると結論づけています。[6]

 

⑤ノルウェー医療サービス知識センターが、18歳から75歳までの総勢409人を対象に臨床試験を実施(2007年)

バレリアン600mgを飲むグループ・プラセボを飲むグループの2つに分け、睡眠の1時間前に服用させて14日後に効果を調査。

バレリアングループ被験者のうち29%の睡眠が改善したのに対し、プラセボグループの睡眠改善は21%にとどまりました。

被験者の自己評価でも、バレリアングループの方が「よくなった」「とてもよくなった」という評価がプラセボグループより5.5%多く、中途覚醒や睡眠時間でもバレリアングループが上回っています。[7]

 

⑥テヘラン医科大学の研究で、閉経後の50~60代の女性100人を対象にバレリアンの根を継続して4週間処方(2011年)

バレリアンの根を飲み続けた被験者の30%の睡眠指数(PSQI)が改善したのに対し、プラセボグループの改善はわずか4%にとどまりました。[8]

バレリアンは単体ではなく、他の成分や療法との併用の効果も研究されています。

 

⑦ドイツのユストゥス・リービッヒ大学ギーセンで、バレリアンとホップの混合液の効果を検証(2008年)

20人がバレリアンとホップの混合エキス2ml入りのハチミツ風味薬液50mlを飲むと、プラセボを飲んだ22人に比べ睡眠時間も深い眠りの時間も長くなりました。

バレリアンとホップの混合液は欧米では不眠の自己療法で使われていましたが、医学的にも効果が確認できたのです。[9]

 

⑧台湾の医師たちがバレリアン2.5%配合のエッセンシャルオイルを2滴たらし、手足の三ヶ所のツボに指圧療法を施術(2012年)

指圧療法を受けた41人は睡眠時間が長くなり、睡眠の途中で目覚める回数も減少、睡眠のスコア(SSS)も改善していました。[10]

 

⑨イラン・セムナン医科大学の研究グループが、39人の患者を対象とする臨床試験を実施(2021年)

バレリアンを飲んだ19人の睡眠指数は7.6改善しましたが、プラセボを飲んだ20人の睡眠指数の改善は3.2にとどまったとのことです。

この実験ではさらに1か月後の休薬期間(薬の効果が切れる期間)をおいて、両グループに逆の処方を実施。

すると、最初にバレリアンを飲んだ19人がプラセボを飲んだ時の睡眠指数の改善は1.4にとどまりましたが、最初にプラセボを飲んだ20人がバレリアンを飲むと、睡眠指数は4.6改善しました。[11]

最後に個々の臨床試験だけでなく、研究成果の総合レビューを確認しておきましょう。

 

⑩千葉大学とウェストミンスター大学などの研究グループが、60件の研究成果をレビュー(2020年)

結果として、バレリアンは睡眠を促進し、関連障害を予防する上で安全かつ効果のあるハーブであると結論づけています。[12] 

以上から、バレリアンを飲むと早く深い眠りにつけるうえ、途中で目覚める回数の減少も期待できるでしょう。

 

バレリアンのその他の効果

バレリアンの睡眠改善効果に関するデータはたくさんありましたね。

ここからは、バレリアンの睡眠改善以外の効果も簡潔にご紹介いたします。

 

1.不安やうつ、ストレスの軽減

バレリアンは不安、うつ、ストレスを緩和する効果も期待されています。

2003年にドイツの植物療法研究誌に掲載された論文では、うつ病患者にバレリアンとセントジョーンズワート(セイヨウオトギリソウ)を同時に処方した効果を検証しました。

研究グループは、バレリアンとの併用はセントジョーンズワート単体よりも不安やうつを改善でき、バレリアン500mgよりも1000mgを服用した方が効果がある、と結論づけています。[13]

先ほど紹介した2021年のイラン・セムナン医科大学の研究でも、バレリアンを服用すると睡眠だけでなく、うつや不安の症状も改善しました。[14]

 

2. むずむず脚症候群の緩和

むずむず脚症候群

バレリアンは、足がむずむずしてじっとしていられない病気「むずむず脚症候群」にも効果が期待されています。

2009年、ペンシルベニア大学看護学部の臨床試験では、37人の被験者のうち8週間800mgのバレリアンを服用したグループの症状と睡眠の質が大きく改善しました。[15]

 

3. 認知機能障害の改善

認知機能

バレリアンには認知機能改善効果も期待できます。

2014年、イランのイスラーム自由大学では、冠動脈大動脈バイパス移植(CABG)を受ける61人の被験者を対象に臨床試験を実施。

バレリアン530mgまたはプラセボを毎日2回・8週間服用させ、服用開始から10日後の手術前後にMMSE(認知症検査)を受けさせました。

プラセボグループでは試験前スコアが27.37で、60日後(手術後50日経過)には24.83に悪化していたのに、バレリアングループの平均スコアは試験前に27.03で、60日後には27.45に改善したそうです。[16]

 

4. 女性の月経前症候群(PMS)

月経前症候群 PMS

バレリアンは女性特有の体調も改善が期待できます。

2013年、テヘラン医科大学を中心とする研究グループは、100人の女子大生を対象に臨床試験を実施。

月経前症候群の期間にバレリアン630mgを1日2回服用したグループでは、心理的肉体的症状が改善しました。[17]

 

5.ホットフラッシュ(更年期ののぼせ、ほてり)の改善

更年期障害

バレリアンは、更年期の女性にも有益です。

2018年、イランのハマダン医科大学が行なった閉経後の女性60人に対する臨床試験では、バレリアン530mgを毎日2回2か月間服用したグループの方が、プラセボを服用したグループよりホットフラッシュの頻度も症状も改善したと報告しています。[18]

以上駆け足ですが、バレリアンの睡眠改善以外の効果をご紹介しました。

 

まとめ

バレリアンの睡眠改善効果については多数の臨床試験結果があり、期待できると分かりました。

また、不安やうつの緩和、女性の体調管理でも試してみる価値があるでしょう。

気になる副作用ですが、2017年にテヘラン医科大学でバレリアンの根そのものを飲ませたところ、被験者の大部分が吐き気やめまいを訴えたとする臨床試験があります。

しかしプラセボグループの副作用も同様だったので、この試験特有の問題とされているのです。

なお、この試験でもバレリアン服用グループの方が睡眠や心理状態で大きな改善が見られました。[19]

先述の千葉大学研究グループのレビューによると、被験者が総勢6,894人に達する研究60件では、興奮や落ち着きのなさがごく少数の被験者に見られた以外に特に深刻な副作用は報告されていないとしています。

生々しい夢、疲労、眠気、胃や腸の不調を訴えるケースはありますが、レビューでは「全体としてバレリアンは全年齢層にとって安全」と結論づけました。[20]

バレリアンの根そのものは独特のにおいがあり用量も分かりにくいため、サプリで摂取した方がよいでしょう。

バレリアンは、他の睡眠薬を使っているのに効果を実感できない人や、副作用で困っている人に是非おすすめしたい成分です。

 

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