グリシンに睡眠改善の効果はある?6つの研究データから検証

公開日:2022/03/15
更新日:2022/03/20

    グリシンとは?

    グリシンは人体を構成する20種類のアミノ酸の1種です。

    体内で生成することができるので、非必須アミノ酸に分類されます。

    グリシンは、コラーゲンを構成するアミノ酸の約3分の1を占めるため、美肌効果のある栄養素としても知られていますね。

    不足すると肌荒れや関節痛を引き起こすことがあります。

    また、ヘモグロビンや筋肉運動に必要なクレアチン、抗酸化物質グルタチオンの原料としても欠かすことができません。

    グリシンは動物性タンパク質から摂取できます。

    肉類全般に含まれていますが、特に牛スジや鶏の軟骨などのコラーゲンに豊富。

    その他、ホタテやエビ、カニなども摂取源です。

    もちろん、サプリで補うこともできます。

    そんなグリシンですが比較的近年、実験中にグリシンをプラセボとして摂取していた被験者が、疲労感が軽減していると提言したことがきっかけで睡眠を改善する効果があるのではと研究が進むようになったのです。

     

    グリシンの睡眠に関する研究6つ

    では実際のグリシンの効果を臨床試験と共に見ていきます。

     

    1. 眠りにつきやすくなる

    生活習慣や不安、ストレスなどのために、なかなか眠りにつけない人が急増していますね。

    入眠促進法として、深部体温を下げるのが効果的と聞いたことがある人もいるのでは?

    就寝3時間前にお風呂に入ることで就寝時に体温が下がり、入眠しやすくなるのです。

    グリシンには手足への血流を促す効果があります。

    すると手足から熱が放出され、深部体温を下げることができるのです。

    そのためグリシンを就寝前に摂取することで、体は自然と睡眠に入っていくことができると言われています。

    2014年に日本人の研究チームによって行われた研究で、この効果が確認されています[1]

    実験ではラットがグリシンを経口摂取した後、体温を計測。

    摂取によって足の裏の皮膚血流が促進され、体温の低下が起きました。

    2gx体重(kg)の量のグリシンを摂取して1時間で約0.6~0.7度体温が低下し、そこからほぼ横這いになりました。

    この効果は、夜なかなか寝付けない人を睡眠に導いてくれるかもしれません。

     

    2. 睡眠の質を上げる

    眠れても頻繁に目が覚める、または朝まで眠り続けることができない場合もありますね。

    もちろん原因が精神的なものであったり、飲酒であったりする場合、その原因を取り除くことが大事になってきます。

    言うのは簡単ですが、実際に行うのは容易ではありませんよね。

    グリシン摂取は入眠だけでなく、睡眠の質も上げてくれるという報告があります[2]

    2007年に行われた研究には、年齢30~57歳の11人のボランティアが参加しました。

    よく眠れないという悩みを持つ人達が、就寝1時間前に3gのグリシンを摂取。

    その後、睡眠ポリグラフィー検査で睡眠の質が分析されました。

    結果、布団で横になっている時間に対し、実際に眠っている時間の割合が増え、睡眠の質も向上していることが明らかになりました。

    グリシン摂取で昼間の眠気と、認知機能にも改善が見られました。

    ベンゾジアゼピンなどの従来の睡眠薬を使用せずに、睡眠の質が改善されたのです。

    いつも、夜横にはなっているのに眠れた気がしないという人にはお勧めかもしれません。

     

    3. ノンレム睡眠の時間を増やす

    人間は睡眠中、ノンレム睡眠と、レム睡眠を繰り返しています。

    ノンレム睡眠は眠りが深い状態で、成長ホルモンが分泌され疲労の回復が行われる時間です。

    2011年に、グリシンはノンレム睡眠の時間を延ばす効果があるという研究が発表されました[3]

    ネズミを使ったこの実験では、就寝10分前にグリシンが手足など末端から投与され、その後5時間にわたり様子が記録されました。

    日中のような明るい時間と、夜を想定した暗い時間とのふたつの時間帯で実験は行われました。

    明るい時間帯ではあまり差が見られなかったのに対し、暗い時間帯での投与では劇的な変化が見られました。

    眠れない時間が短縮したと同時に、睡眠中目が覚めてしまう時間も減少しました。

    そして、ノンレム睡眠の時間もグリシンが投与されなかったネズミと比べて倍になっていました。

    同じ睡眠時間でも、グリシンは疲労回復や体の修復が行われる時間を長くしてくれたのです。

    眠っているのに疲れが取れた気がしないのは、ノンレム睡眠時間が短いからかもしれません。

    グリシンは睡眠時間だけでなく、体の回復時間をしっかりとれる手助けをしてくれるようです。

     

    4.十分に睡眠時間がとれなかった次の日の疲労感を軽減

    2012年にFrontier in Neurologyで発表されたこの研究で、グリシンの摂取は前夜に睡眠時間が十分取れなかった日のパフォーマンスを向上してくれるという結果が出ています[4]

    実験で参加者は、3日連続、通常より25%睡眠時間を削るよう調整されました。

    そして就寝時に3gのグリシン、またはプラセボを摂取。

    翌日に主観的な感覚を査定するための尺度やアンケートを使用し、眠気や疲れなどが数値化されました。

    併せてパフォーマンスを査定するため精神運動覚醒検査も行われました。

    結果は、翌日に体感した疲れがプラセボ組と比べると激減。

    また、全体的に眠気が軽減したと答えた人も多かったのです。

    精神運動覚醒検査での反応時間にも明らかな改善が見られました。

    グリシン摂取は翌日の疲労感やパフォーマンスの低下を防いでくれていたのです。

    この効果は、睡眠時間が限られてしまうことが多い人にはとても嬉しい効果でしょう。

     

    5. セロトニンレベルを上げる

    セロトニンは睡眠ホルモンであるメラトニンの原料であり、不足することで睡眠リズムが狂うとされています。

    2011年にPsychiatry and Clinical Neurosciencesで、グリシン摂取により脳内セロトニンが増えるという研究が発表されました[5]

    研究チームは、グリシン摂取が前頭前皮質におけるセロトニンとドーパミンの量にどう影響を与えるかを検証しました。

    ネズミが、1~2gx体重(kg)のグリシン摂取の組、2gx体重(kg)のD-セリン摂取の組、そしてL-セリン摂取の3組に分けたところで実験開始。

    その後10分間、皮質レベルを計測したところ、グリシンとD-セリン摂取の組では前頭前皮質におけるセロトニンレベルが著しく上昇したのです。

    一方ドーパミンのレベルには変化は見られませんでした。

    この一時的なセロトニンの上昇は、不眠問題を抱える人たちの睡眠の質の改善に役立つのではと結論づけられています。

     

    6. 抗酸化作用

    グリシンは体がグルタチオンを生成するのに必須のアミノ酸のひとつです。

    グルタミン酸、システイン、そしてグリシンの3つのアミノ酸によりグルタチオンはできています。

    グルタチオンは強い抗酸化作用があり、活性酸素による様々な体へのダメージを防いでくれています。

    グリシンレベル低下はそのままグルタチオン低下を招きます。

    グルタチオンの原料となるグリシンを補うことで、グルタチオンの合成が促されるという動物研究結果がいくつも発表されており、その重要性が指摘されています[6]

    体が活性酸素を処理しきれないと、細胞機能低下や組織損傷が生じ、疲労感や身体的パフォーマンス低下などの症状が発生すると考えられています。

    質の良い睡眠と共に、グルタチオンが生成されるようグリシンを補うことで、昼間の疲労感をさらに軽減できます。

    研究レポートでは、グリシンは睡眠の改善と共に、心臓肥大、メタボリックシンドローム、糖尿病による合併症、肝機能などの改善効果も見込まれるとしています。

     

    まとめ

    グリシンはアミノ酸なので、摂取は適量であれば安全とされています。

    実験では1日3~5g使用したものが多いようです。

    ですが、副作用全くなしと証明する研究が十分になされたわけではないので、子供や妊婦さん、また肝臓や腎臓、心臓にすでに疾患のある人は摂取前に専門家に相談しましょう。

    クロザピンを摂取している人はグリシンの摂取を避けた方がいいとも言われています。

    きっかけがプラセボ摂取の人が効果を感じたことであるだけに、摂取により疲労感軽減を体感する人が多いようです。

    よく眠るというのが簡単でないこの時代、できる範囲で生活習慣を改めると共に、グリシンの力を借りて体を回復させ、すっきり目覚められたら素晴らしいですね。

     

    ※記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。サイトの情報を利用し判断及び行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。

      FOR YOUあなたにおすすめの記事