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5-HTPは危険?14件の研究データから効果と副作用を解説
公開日:2022/07/15
更新日:2022/07/29
セロトニンを増やし、睡眠の質が改善できると言われている『5-HTP』。
日本では医薬品登録されているため、サプリとして摂取するには海外から個人輸入するしかありません。
しかし、5-HTPは安全なのでしょうか。
今回は14件の研究データをもとに、5-HTPの効果と副作用を解説します。
Contents [目次を開く]
5-HTPとは?
最近は5-HTPが不眠症対策に役立つと言われ、輸入サプリが販売されています。
5-HTPとは5-ヒドロキシトリプトファンというアミノ酸の一種。
体内で幸せホルモンのセロトニンに変化し、このセロトニンが脳の中で精神の安定、睡眠改善、満腹感による肥満防止などの働きをするので、重宝されています。
5-HTPは通常の食品には含まれておらず、本来は体内でトリプトファンを元に生成される物質です。
トリプトファンは魚、のり、肉、チーズ、豆類など色々な食品に含まれます。
日本食品標準成分表によると、特にかつお節(100gあたり960mg)、ビーフジャーキー(690mg)、焼きのり(520mg)、きな粉(500mg前後)、プロセスチーズ(同300mg)、納豆(250mg)などで多く摂取できるそうです。[1]
しかし、やはり5-HTPを直接摂取した方が効率的なので、海外ではアフリカ原産のグリフォニアという植物から5-HTPを抽出したサプリが製造販売されています。
日本でも海外製サプリを購入して摂取することは可能ですが、実は要注意。
日本では5-HTPは医薬品成分とされ、健康食品も含め、5-HTP含有食品の製造販売は認められていません。
国立の医薬基盤・健康・栄養研究所が運営する「健康食品の安全性・有効性情報」には、5-HTPを含む健康食品について、2007年以降5件の注意喚起が掲載されています。
注意喚起では、厚生労働省と千葉県、神奈川県、福岡県が5-HTP含有製品を使用しないこと、使用後体調に不安がある場合医療機関や保健所に相談することなどを呼びかけました。[2]
ここで気になるのが、実際のところ、5-HTPには効果があるのか?そして副作用は大丈夫なのか?という問題です。
そこで、本記事では5-HTPの効果と副作用について研究データをもとに検証してみたいと思います。
5-HTPの睡眠に関する研究データ9個
5-HTPには、脳内でのセロトニン生成を促して精神を安定させ、抗うつ・抗不安・過食(肥満)防止、そして睡眠改善に効果があるとされます。
ここからは、9件の研究データに基づいて5-HTPの睡眠改善効果を見てみましょう。
1.レム睡眠増加で脳をリフレッシュ
5-HTPは研究の早い時期からレム睡眠増加の働きが注目されていたようです。
睡眠には寝ていながら眼球が動くレム睡眠と、眼球が動かないノンレム睡眠があります。
ノンレム睡眠の方が深い眠りとされ重視される場合が多いですが、レム睡眠にも大脳皮質での物質交換を促して脳をリフレッシュする効果があるとのことです。
近年ではレム睡眠が不足すると認知症のリスクが高まると考えられています。[3]
1971年のアメリカ国立衛生研究所(NIH)とスタンフォード大学による臨床試験では、5-HTPを摂取した12人の健康な被験者のレム睡眠が53%増加し、ノンレム睡眠が減少したそうです。[4]
1973年のスタンフォード大学の研究でも、レム睡眠不足の統合失調症の子どもに体重1kgあたり3mgの5-HTPを8日間服用させたところ、レム睡眠の時間が長くなったとのこと。[5]
ただし、5-HTPのレム睡眠改善効果は短期的なものと考えられています。
ベルギーアントワープ大学による1975年の臨床試験では、長期的な効果を期待して6人のダウン症児に対して1年以上5-HTPを摂取させましたが、レム睡眠の増加は8日以上続きませんでした。[6]
睡眠サプリはノンレム睡眠の深い眠りを増やす成分が多いので、レム睡眠に働きかける5-HTPはちょっと個性的ですね。
2.睡眠時の異常行動を抑制
5-HTPは夜驚症やレム睡眠行動障害(RBD)の症状緩和でも注目されています。
夜驚症は、子どもが睡眠時に怖い夢などを見て中途半端に覚醒して泣き叫んだりする病気です。
その場に居合わせた人が呼びかけても反応が鈍いなどの異常行動がおきます。[7]
1987年のイタリアローマ大学の臨床試験では、頭痛と睡眠障害を訴える小学生48人に5-HTPを処方したところ、夜驚症などの睡眠障害も頭痛も緩和したとのことです。[8]
2004年にはローマ・ラ・サピエンツァ大学でも、3歳から10歳の夜驚症患者45人に対して臨床試験が行われました。
31人が1日体重1kgあたり2mgの5-HTPを20日間摂取したところ、1ヶ月後29人(93.5%)に改善が見られ、6ヶ月後には26人(83.9%)が完治しました。[9]
レム睡眠行動障害(RBD) はレム睡眠中に体が動き出してしまう睡眠障害で、レム睡眠中の悪夢によって寝言、叫び声、攻撃的行動などの異常行動を起こしてしまうのが特徴です。
レム睡眠行動障害はパーキンソン病など脳の病気が関係しているケースも多いですが、原因不明の突発性も多いとされます。[10]
イタリアのカルガリー大学では、2021年に18人のパーキンソン病患者に対して、5-HTPの効果を確認しました。
5-HTPを50mg4週間投与された患者は、レム睡眠の比率が10.4%から13.4%増えましたが、レム睡眠行動障害は増えなかったそうです。[11]
不眠症でもこういうタイプの安眠効果が必要なケースが確かにあるでしょうね。
3.入眠時間と睡眠時間も改善
ここまでユニークな効果を紹介してきましたが、5-HTPには寝つきをよくして長い時間眠れるようにする効果もあります。
2017年、韓国の乳業会社とトングク(東国)大学校は、ネズミに卵黄から抽出した5-HTPを飲ませた上で、催眠薬を飲ませる試験を行いました。
すると、5-HTPを体重1kgあたり6mg飲んだネズミたちの入眠時間は平均2.5分に短縮し、睡眠時間は平均110分にのびました。
一方、プラセボ(偽薬)を飲まされたネズミたちの入眠時間は3.5分、睡眠時間は80分強にとどまっています。[12]
2010年にはアメリカロサンゼルスの製薬会社が、GABAや5-HTPを混合した成分の効果を臨床試験で検証。
睡眠障害のある18人のうち、GABA/5-HTP成分を摂取した9人の入眠時間平均は32.3分から19.1分短縮し、平均睡眠時間は5.0時間から6.83時間に増えました。
一方、プラセボを摂取した9人の入眠時間平均は34.8分から33.1分になっただけで、平均睡眠時間にいたっては、7.17時間から7.11時間に減ってしまったそうです。[13]
5-HTPの副作用に関する研究データ5つ
ここまで睡眠効果を見てきて、5-HTPに興味を持たれた方もいると思われますが、副作用も気になりますよね?
そこでここからは、研究データから5-HTPの副作用を確認していきます。
1.胃腸関連
アメリカデューク大学を中心とする研究グループが2016年に行なったレビューでは、5-HTPの副作用は吐き気や胃けいれん、下痢など胃腸に関するものが一般的だとしています。
例えば、1976年のスペインサラマンカ大学などによる臨床試験では、5-HTPを200mg摂取した15人中2人に下痢が見られました。
1982年オランダユトレヒト大学を中心とした臨床試験でも、被験者10人が5-HTPを200mg摂取すると吐き気を訴える人がいたと報告されています。
ただし、いずれも一時的な症状とのことです。[14]
2.軽そう病
軽そう病とは、そう病ほど極端ではありませんが、気分の高揚・いらいら・多弁・睡眠時間の減少など通常とは異なる状態が持続する気分障害です。
1980年にオランダで行われた臨床試験では、99人が5-HTPを毎日200mg摂取すると、そのうち3分の1に軽そう病の症状が現れたそう。
こちらも一時的なもので深刻な副作用ではなかったようですが、気分に大きな波が生じるリスクには用心した方がよいでしょう。[15]
なお、5-HTPの摂取量については、上記胃腸と軽そう病の副作用から多くても1日200mg以下にすべきです。
2012年にアメリカの医師たちが行なったレビューでは、肥満専門医師266人による5-HTP処方量は最少21mg、最大82mgの範囲だと判明しています。
睡眠改善のための摂取も、就寝前にこれ以下から始めるのが無難でしょう。
また著者たちは、5-HTP を1日900mg摂取すると20%の被験者が吐き気をもよおすとしており、これ以上の摂取は控えるべきです。[16]
3.セロトニン症候群
セロトニン症候群とは、セロトニンに影響する薬の副作用です。
精神的には不安・混乱・いらいら・興奮・多動、身体的には手足のけいれん・震え・硬直・自律神経関連で発汗・発熱・下痢・脈拍の異常な増加など、多様な症状が起こり得ます。[17]
上記デューク大学の2016年のレビューでは、5-HTPによって深刻なセロトニン症候群が生じたことはない、としていました。
しかし、冒頭ご紹介した2017年のアメリカ人男性の事例では、5-HTPとセロトニン症候群との関連を指摘しています。
この症例報告では、2008年の別の症例報告も参照しつつ、抗うつ薬セルトラリン(SSRIの一種)と5-HTPの併用がセロトニン症候群を発生させて急性コンパートメント症候群を悪化させたという見解を示しました。[18]
常識ですが、”混ぜるな危険”ということですね。
5-HTPを摂取する時も他の薬やサプリと併用していいか、医師としっかり相談しないといけません。
4.筋肉へのダメージ
5-HTPの過剰摂取により、急性コンパートメント症候群や横紋筋融解症といった筋肉へのダメージが発生するリスクもあります。
医学のコンパートメントとは、下肢や前腕など、筋肉がまとまっている区画のことです。
骨折や急激な運動で区画内の筋肉や血管、神経が物理的な圧迫を受けると、痛みや、ぴりぴり、チクチクした感覚、筋肉が張った感じ、感覚喪失、麻痺が生じます。[19]
横紋筋融解症とは、薬やけがなどが原因で筋肉が壊れてしまう病気です。
手足の筋肉痛、しびれ、こわばり、筋力の低下などの症状があります。[20]
2017年のアメリカ人28歳男性は、コンパートメント症候群と診断されて手術を受け、横紋筋融解症も併発する恐れがあるとされました。
この男性はいろいろな薬を過剰摂取していたため5-HTPが原因と断定しきれませんが、今後の研究が必要です。
5.うつ病患者へのリスク
精神的不調を抱える人は、5-HTPサプリの使用は避けた方がいいかもしれません。
即効型(即時放出)の5-HTPの半減期はわずか2時間で、脳内への吸収も速いが減少も速いので、脳内で作られるセロトニン濃度も同じペースで増減してしまい、心身の不調をきたす恐れがあるのです。
上記デューク大学の2016年のレビューは、うつ病治療薬としてのセロトニンの急激な減少が引き起こす二つの問題に注目しています。
一つはうつ病の再発。
脳内のセロトニン濃度が急激に半減すると、うつ病患者の50%のうつ症状が再発するとのことです。
5-HTPの半減期は2時間なので、1日3回8時間おきに規則正しく摂取しても、脳内のセロトニン濃度には8時間周期の山と谷が生じます。
しかも具合の悪いことに、血液中の5-HTP濃度は最大時と最小時で約5倍も差があるそう。
他の治療薬では半減期は20時間以上で、増減の幅も30%程度なので、即効型の5-HTPにはうつ病治療薬としての出番はありません。
二つ目は抗うつ薬中断症状のリスク。
抗うつ薬中断症状は、数週間抗うつ薬を使用した後発生する禁断症状で、めまい、頭痛、吐き気、だるさ、寒気、イライラ、不安、不眠など様々です。
2018年のイギリスのローハンプトン・ロンドン大学などの研究者たちによるレビューでは、抗うつ薬使用を中断した4,052人中2,258人(約56%)が禁断症状を経験したという結果が出ています。[21]
以上から、天然のままの即時放出(IR)タイプの5-HTPは、実用的なうつ病治療薬にはなりえないと評価されました。
しかし、半減期が長い持続放出型(徐放、SR)の5-HTPが開発され、動物実験では効果があり、副作用もないと確認されています。[22]
持続放出型(SR)と即効型(IR)、見分けられるか?
ここまで5-HTPの副作用を見てきました。
その中でも一番注意したいのは、即効型(IR)の5-HTPサプリを摂取すると、一時的に気分がひどく高揚した後ひどく落ち込むリスクです。
特にうつ病や不安などを抱えている人にはつらいかもしれません。
それを避けるためには持続放出型(SR)サプリを選ぶべきですが、現在市場に出回っている海外製5-HTPサプリが持続放出型(SR)か即効型(IR)か見分けるのは、専門家でなければ困難と思われます。
まとめ:5-HTPの並行輸入サプリには要注意…
5-HTPは脳内のセロトニンを増やしてレム睡眠を増やす成分ですが、即効型(IR)を摂取すると、気分の浮き沈みが激しくなるリスクがあり、不安です。
かといって、期待通りの持続放出型(SR)サプリを入手できる保証もありません。
5-HTPは日本では医薬品扱いですから、ここはやはり5-HTPサプリを自己判断で使用するのは避けた方がよさそうです。
他の安心できる定番成分を摂取した方が無難かもしれません。
どうしても5-HTPを試したい場合、医師とよく相談して医薬品を摂取することをおすすめします。
※記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。サイトの情報を利用し判断及び行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。
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