メラトニンサプリは危険?13件の研究データから効果と副作用を解説

公開日:2023/01/11
更新日:2023/01/13

”睡眠ホルモン”とも呼ばれる『メラトニン』。
海外ではメラトニンそのものを摂取できるサプリが販売されていますが、日本で医薬品に指定されているのはなぜでしょうか。
今回は研究データをもとに、メラトニンの効果と副作用を解説していきます。
安全に服用するためにも、メラトニンの正しい知識を身に着けておきましょう。

  • 記者 WRITERSTERON編集部
    ニュース担当

メラトニンとは?

不眠に悩みを抱えている場合、メラトニンという成分を知っている方、興味がある方は多いのではないでしょうか。

メラトニンは動植物の体内で合成されて体内時計に影響するホルモンです。

人体では松果体と呼ばれる脳中央部の小さな器官で作られ、眠気をもよおす作用があります。

目の網膜が光を感じると生成が抑制され、暗い場所で光を感じないと生成されるメラトニン。

つまり、人間の生活リズムと睡眠周期に影響します。[1]

私たちが日中目覚めていて夜眠くなるのも、メラトニンの作用が大きいんですね。

そのため、メラトニンには睡眠改善が期待され、医薬品やサプリが世界中で販売されているのです。

例えばアメリカでは、メラトニンはサプリとしての使用が許可され販売されています。

2012年のアメリカ国民健康調査によると、アメリカの成人の18%が天然物(ビタミン、ミネラル以外)のサプリを利用していました。メラトニンはその中でも4番目に人気で、アメリカの成人の1.3%が使用しているそうです。[2]

サプリ先進国のアメリカで人気となると、気になってしまいますよね。

日本でも並行輸入品が手に入りやすく、効き目が強いと人気のようです。

しかし、気をつけてください。

日本ではメラトニンは医薬品成分として扱われ、食品としては販売できません。

実際に国立の研究所が運営するHP「健康食品の安全性・有効性情報」には、メラトニンを含む健康食品に関する注意喚起が掲載されています。[3]

したがって、日本でメラトニンを摂取したい人は病院で医師の処方を受けるか、海外製品を自己責任で輸入する必要があります。

そんなメラトニン、結局のところどれほどの効果があるのでしょう?そして、メラトニンサプリは輸入して自己判断で摂取しても安全なのでしょうか?

この記事では臨床データに基づき、メラトニンの睡眠に関する効果と副作用、さらに安全性について検証したいと思います。 

 

メラトニンの睡眠に関する研究データ6個

メラトニンの睡眠効果については、2022年6月にオンライン公開された出来立てホヤホヤの研究レビューがあります。[5]

オランダのアムステルダム大学とイギリスのサウザンプトン大学が、質の高い34件の臨床試験を選びだして、効果を数値化しているので、このレビューを中心に効果をご紹介していきます。

 

1.寝つきをよくする

まず、レビューで取り上げられた臨床試験のほとんどで、眠りにつくまでの時間が10~20分程度、またはそれ以上改善しています。

例えば、イギリスのCPSリサーチを中心とする2011年の研究では、メラトニン2mgを3週間服用した497人の入眠時間が平均15.4分改善しました。

一方、プラセボ(偽薬)を飲んだ225人の入眠時間の改善は平均5.5分でした。[6]

 

2.睡眠時間を増やす

メラトニンはトータルの睡眠時間も増やします

34件の臨床試験のほとんどで、メラトニンを摂取したグループの睡眠時間はプラセボグループより長くなり、その約半数でメラトニングループが30分以上差をつけています。

イギリス、イスラエル、アメリカの3ヶ国からなる研究者グループは、2017年に未成年の不眠症患者100人に対する臨床試験を行いました。

13週間に及ぶ試験期間中2~5mgのメラトニンを飲み続けたグループの睡眠時間は平均57.5分延びましたが、プラセボを飲み続けたグループの睡眠時間は平均9.14分増えただけでした。[7]

 

3.睡眠相後退障害(夜型生活) 改善の可能性

早寝早起きしたいのに深夜まで眠れない状態を睡眠相後退障害と言います。

通常、私たちの体は光が弱まるのを感じてメラトニンを分泌し始め、時間がたつと眠くなる仕組み。

しかし、メラトニン分泌開始時刻(DLMO)が遅れると眠くならないので、就寝時刻が遅くなって睡眠時間が短くなり、朝起きられなくなってしまうのです。

そこで、眠りたい時刻の少し前にメラトニンを摂取してメラトニン分泌開始時刻を早めようとする臨床試験7件が行われ、4件で効果がありました。

これについてはオランダの医師グループが2008年に行なった2件の臨床試験が注目に値します。

2件とも被験者は4週間にわたって2.5~5mgのメラトニンを服用しました。

すると、アンジェルマン症候群(AS)という障害のある患者3人のメラトニン分泌開始時刻は平均28分[8]知的障害のある28人は平均約2時間も早くなりました。[9]

また、オーストラリアのメラトニン研究グループは、2018年に睡眠覚醒スケジューリングとメラトニン摂取の組み合わせ療法を実施。

被験者のうち54人が、希望睡眠時間の1時間前にメラトニンを0.5mg摂取して予定通りに就寝する生活を4週間続けると、平均入眠時刻が午前1時32分から午後11時41分に早まりました

これは1時間52分の改善で、同じ行動療法を行いつつプラセボを飲み続けた49人と比べて30分以上の改善となります。[10]

 

4.ジェットラグ(時差ボケ)対策

メラトニンはジェットラグ(飛行機旅行による時差ボケ)への効果も、多くの臨床試験で認められています。

2004年、フランス陸軍保健サービス(SSA)はアメリカ空軍の27人の協力を得て、カフェインとメラトニンの時差ボケ対策効果を調べました。

被験者たちはテキサス州からフランスまで、33時間眠らずに時差7時間分の飛行を行い、その後リカバリーのために規則正しい生活を9日間送ります。

その間27人は9人ずつに別れ、①フライト前夜から5日間夜にメラトニン5mg、②5日間朝にカフェイン300mg、③5日間夜にプラセボ300mgのいずかを摂取して効果を調査。

その結果、睡眠の自己評価ではメラトニングループは早い時刻に眠れて睡眠時間も長くなり、カフェイングループは目覚めは早いが起きるのがつらいと回答しました。

一方、日中の眠気を脳波測定すると、プラセボグループが一番眠く、メラトニングループが二番目で試験開始前より眠くなり、カフェイングループが一番眠くないと回答。

最後に、口内の体温の変化で時差への適応を調べたところ、メラトニングループの適応が最も早く、フライト2日後には体温が現地時間の朝低く、夜高い状態に適応できました。

カフェイングループは3日後に適応しましたが、プラセボグループは実験期間の最後まで現地時間とずれていたそうです。[11]

 

5.中途覚醒

夜中に目覚めてしまう中途覚醒も、不眠の苦しみですよね。

しかし、レビューが評価した臨床試験11件中、大きな効果があったものは4件だけなので、メラトニンの中途覚醒への効果は不確実です。

ただし上記オランダの2008年の臨床試験2件では、アンジェルマン症候群の患者3人の中途覚醒回数は週平均3.1日から1.6日に減り、知的障害者28人の中途覚醒は1日平均0.4回減ったそう。 

以上、最新レビューと6件の臨床試験から、メラトニンの睡眠改善効果を確認しました。

メラトニンは確かに、睡眠の様々な問題を解決できそうですね。

元々人体で作られる成分なので、安心して摂取できそうな印象もあります。

しかし、メラトニンは日本ではあくまで医薬品成分として扱われ、メラトニン配合食品が見つかると政府から回収が指示されているのも事実。

なぜなのでしょうか?

メラトニンの副作用や安全性から、理由を考えていきたいと思います。

 

メラトニンの副作用と安全性に関する研究データ

メラトニンの副作用や安全性については、数多くの臨床試験からの報告やレビューがあります。

イギリスのヨーク大学を中心とする研究グループの2019年のレビューが一番詳しそうなので、ここからは、その内容を中心に見ていきましょう。[12]

 

1.頭痛

頭痛

レビューによると、13件の臨床試験のうち11件で副作用が報告されており、少なくとも5件で頭痛が報告されています。 

その中でもイギリスの小児科病院とオックスフォード大学などによる2012年の臨床試験の副作用の調査が詳細で、メラトニンを12週間摂取した70人中10人が頭痛を訴えたと報告しました。[13]

頭痛の発生率は約14%、かなり高いですね。

ただし、この試験では被験者の体調に合わせて0.5mgから12mgまで処方量を増やす特殊な方法を用いているので、過剰摂取した被験者で副作用が多くなった可能性があります。

2010年のオランダのレビューによると、メラトニン服用による頭痛の一般的な発生率は6~7%だそうです。[14]

 

2.寒気

カナダの医師たちによる2008年の臨床試験では、メラトニン5mgを3ヶ月間服用した50人のうち8人が寒気を訴えたとのことです。[15]

また、上記イギリスの2012年の臨床試験でも、70人中6人が低体温症になったという報告があります。 

 

3.吐き気や腹痛

ヨーク大学のレビューでは4件の試験で吐き気、腹痛、下痢の報告があり、イギリスの2012年の臨床試験でも、70人中18人がおう吐や吐き気を訴えています。

 

4.めまい

めまいもヨーク大学のレビューでは4件の試験で報告があります。

2007年のオランダでの臨床試験では、6歳から12歳の不眠症の子供が3mgまたは6mgのメラトニンを4週間服用したところ、53人中2人がめまいを起こしました[16]

 

5.日中の眠気

日中の眠気は多くの臨床試験で報告があり、ヨーク大学のレビューでも3件の試験で報告があります。

イギリスの2012年の臨床試験でも、70人中9人が眠気を訴えました

運転中や危険な作業の時の眠気は大惨事につながる恐れがありますから、メラトニンの副作用の中でも、眠気が一番警戒すべきだと思われます。 

以上がメラトニンの主な副作用です。

 

海外製メラトニンサプリの「警告」と品質は要注意

ここまでメラトニンの効果と副作用を見てきました。

副作用を知った上で、海外製サプリを輸入して摂取してみたいと思う方もいるかもしれません。 

メラトニン摂取の推奨量ですが、2010年のオランダのレビューが取り上げたほとんどの臨床試験で被験者に1日5mgを処方しているので、これが目安と考えていいでしょう。

慎重を期して、3mgくらいから試してもよいかもしれません。

上記2012年イギリスの臨床試験での副作用発生率の高さを考えると、医師の指示等がない限り10mg以上の摂取は避けた方がよいと思われます。

もうひとつ、メラトニン摂取で特に気をつけたいのは摂取する時刻

仕事などの活動を終えた後、いつ眠くなってもよい時間帯に摂取し、運転や危険な作業などの前に摂取するのは絶対避けるべきです。

他にも注意しなければならないことが二つあります。 

まず、安全性情報の確認と理解が不可欠です。

横浜薬科大学などの研究グループが、アメリカ製メラトニンサプリ17製品の容器ラベルの安全性情報を調査し、その結果を2014年に発表しました。

ラベルには、サプリはあくまで栄養補助食品なので、アメリカ食品医薬品局(FDA)の評価を受けていないこと、疾病の診断・治療・予防用ではないことが明記されています。

さらに重要なのは、ラベルの安全性情報が「注意」ではなく「警告」(WARNING)となっている点です。

そして、病気の治療や医薬品を常用している場合医師の確認が必要なこと、妊娠・授乳期間中や車の運転時の使用、アルコールとの併用なども禁止する旨も記載されています。[17]

心配なのは、2018年に日本の小児科医師と淑徳大学の研究グループが行なったメラトニンサプリの品質評価の結果です。

日本で入手できるアメリカ産サプリのメラトニン含有量を調べたところ、8製品中7製品が表示された量から大きく外れていたのだとか…。

含有量は日本で医薬品に求められる成分含有量95.0%~105.0%の範囲外で、最大の製品で表示の121.6%、最少の製品で81.8%だったと判明しました。

アメリカでは、メラトニンは医薬品ではなく栄養補助食品に分類されるため届け出だけで販売できるので、このようなばらつきが容認されているのだそうです。[18]

つまり、個々の錠剤やカプセルの含有量がばらついているので、適量摂取が困難となります。

量が少なければ効果が出ないだけかもしれませんが、多すぎれば過剰摂取する危険があるのです。 

 

メラトニンを自己判断で使うのは危険…

メラトニンには様々な睡眠効果が期待され、数多くの研究が行われてきました。

しかし一方で副作用の報告も多く、アメリカ製サプリのラベルには「警告」表示があると分かりました。

特に含有量のばらつきを考えると、外国製サプリを輸入して使用したところで毎回同じ効果は得られず、過剰摂取してしまうかもしれません。

やはりメラトニンは医師の指示に従って医薬品を服用するのが賢明です。

手軽に手に入るからこそ、十分気を付けなければなりませんね。

 

※記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。サイトの情報を利用し判断及び行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。

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