セントジョーンズワートに睡眠改善効果はある?副作用は要確認!

公開日:2022/05/20
更新日:2022/05/16

セントジョーンズワート

欧米で古くから治療に用いられてきたハーブの一種『セントジョーンズワート』には、さまざまな効果が期待されています。
傷薬や鎮痛剤のほか、うつ病治療や睡眠改善にまで効果があると考えられており、世界各国で研究が進んでいるのです。
今回はセントジョーンズワートの効果について、研究データを元に紹介します。

  • 記者 WRITERSTERON編集部
    ニュース担当

セントジョーンズワートとは?

最近、セントジョーンズワートという成分が睡眠改善に良いという口コミを見かけます。

セントジョーンズワートは和名セイヨウオトギリという多年草で、ハーブの一種です。

ヨーロッパでは6月24日の聖ヨハネの日(イエス・キリストに洗礼を授けた洗礼者ヨハネの誕生日)の頃に花を咲かせるため、「聖ヨハネの草」の意味でこの名がつきました。

中世ヨーロッパでは聖ヨハネの日の前日にセントジョーンズワートや薬草をつみ、魔よけや厄よけとしてドアなどに飾り付けたそうです。

欧米では古くから傷薬や鎮痛剤として使われてきましたが、1980年代から抗うつ作用に注目する研究が増え、サプリも販売されています。

日本でもセントジョーンズワートのサプリが販売されており、主に不安やうつなどの心理状態の改善や月経前症候群、更年期障害など女性の体調管理での効果を伝えるレビューが多数。

一方で、睡眠改善に関するレビューも見かけます。

セントジョーンズワートの睡眠改善効果は、科学的にどこまで明らかになっているのでしょうか?

副作用はないのでしょうか?

この記事では、セントジョーンズワートの睡眠改善やその他の効果に関する研究成果と副作用についてご紹介します。

 

セントジョーンズワートの効果

セントジョーンズワートは古くから研究されていますが、カナダ・マクマスター大学の研究者が行なった分析により、研究の件数が明らかになっています。

同研究者は2021年にデータベースを検索し、セントジョーンズワートに関する研究文献を分析。

1859年から2021年までの間に1,970件の研究があり、1990年代から件数が急激に増加しているとわかりました。[1]

では実際、研究によりセントジョーンズワートにどのような効果があると判明したのか紹介していきましょう。

 

1.うつ病治療

うつ病

セントジョーンズワートのうつ病に対する効果は研究者から注目されて数多くの臨床試験が行われ、体系的なレビューも繰り返し行われています。

ミュンヘン工科大学などドイツの研究グループは、2008年に被験者合計5,489人に対する29件の臨床試験をレビュー。

結論として、中程度までのうつ病(MDD)に対しては抗うつ薬と同程度の効果があり、副作用は抗うつ薬より少ないと報告しました。[2]

近年のレビューでも同様の見解が示されています。

  • カナダ気分・不安治療ネットワーク(CANMAT)によるうつ病治療に関するガイドライン(2016年)[3]
  • アメリカのランド研究所政策大学院などの研究グループによるレビュー(2016年)[4]

また、2005年にドイツのエッセン大学で行われた臨床試験では、241人のうつ病患者がセントジョーンズワート612mg(STW3)またはセルトラリン(抗うつ薬)50mgを12週間服用して、効果を比較しました。

結果として、うつ病の心理試験の数値を表すハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)の平均スコアは、両グループとも22程度から8程度に改善。

副作用の発生頻度はセントジョーンズワート服用グループが9.8%(12人)に対し、セルトラリン服用グループは13.6%(16人)でした。[5]

同研究グループは翌2006年にも臨床試験を行い、今度は388人を3組に分け、セントジョーンズワート(STW3-VI)900mg、抗うつ薬シタロプラム20mg、プラセボ(偽薬)を処方して効果を比較。

3組とも開始前のHAMD平均スコアは22前後でしたが、セントジョーンズワートとシタロプラム服用グループは同じ10.3までスコアが改善し、プラセボグループは13.0にとどまっています。

なお、シタロプラムグループでは被験者の53.2%に何らかの副作用があり、プラセボは30%、セントジョーンズワート服用グループの副作用は17.2%でした。[6]

2012年にはイランのジュンディーシャープール医科大学でも臨床試験が行われ、うつ病患者に対するセントジョーンズワートの効果が確認されています。[7]

 

2. ホットフラッシュ(更年期障害)の緩和

更年期障害

うつ病治療についでセントジョーンズワートが研究者の注目を集めているのはホットフラッシュ(のぼせ、ほてりなどの更年期障害)の症状緩和だと思われます。

2009年、カナダのケベック大学の研究グループは、ホットフラッシュの症状がある40~65歳の女性47人を対象にセントジョーンズワートの効用に関する臨床試験を実施。

セントジョーンズワート900mgを三か月間服用すると、ホットフラッシュの症状が日当たり2.2回減少し、症状を数値化したホットフラッシュスコアは3.8改善しました。

一方、プラセボを飲んだグループの日当たり発症回数は1.0回減、ホットフラッシュスコアは1.8の改善にとどまっています。[8]

また、2010年にイランのシーラーズ医科大学では平均年齢50.4歳の女性100人を対象に臨床試験を行い、ホットフラッシュに対するセントジョーンズワートの効果を検証しました。

8週間後、セントジョーンズワートグループのホットフラッシュの期間はプラセボグループより短くなり、発症頻度と症状についてもセントジョーンズワートグループの方が4週間後から大幅に改善したと報告しています。[9]

 

3.傷の治療

傷 治癒

セントジョーンズワートは古来飲み薬としてだけでなく塗り薬としても利用され、近年では塗り薬の効果も科学的に検証されつつあります

ここからは、ドイツ・フライブルク大学医療センターを中心とした研究グループによる2014年のレビューをもとに、塗り薬としてのセントジョーンズワートの効果をご紹介しましょう。[10]

まず、セントジョーンズワートには抗菌・抗炎症作用などがあるため、傷の治療に効果があると確認されています。

1975年の研究では、セントジョーンズワートの花とオリーブオイルを成分とする軟膏を塗ったところ、表皮のやけど(第1度熱傷)は48時間以内に治癒し、真皮や皮下組織に達するやけど(第2~3度熱傷)も通常の治療の3倍以上の速さで治癒しました。[11]

1979年のイタリアの臨床試験では、入院患者30名の床ずれに対してセントジョーンズワートの花とオリーブオイルを配合したオイルの効果を調査。

セントジョーンズワート配合オイルを15日間塗布した患者の床ずれの面積は37%小さくなり、単なるオリーブオイルを塗っただけの患者では17%にとどまりました。[12]

 

4.アトピー性皮膚炎の治療

アトピー

セントジョーンズワートは抗炎症・抗バクテリア作用によってアトピー性皮膚炎治療でも効果があると確認されています。

2003年、フライブルク大学での臨床試験では、セントジョーンズワート配合クリームを塗ったアトピー患者の症状はプラセボを使用した患者よりも改善しました。[13]

 

5.その他期待されている皮膚への効果

水ぶくれ

セントジョーンズワートには乾せん(免疫機能の異常による皮膚の異常)、単純ヘルペス(口などに水ぶくれができる)、皮膚がんの治療などでも効果が期待されていますが、まだ効果は証明されていないのでさらなる研究が待たれます。[14]

 

セントジョーンズワートに睡眠改善効果はある? 

セントジョーンズワートに関する研究は多数存在し、以上の効用が確認されています。

一方、数は多くないものの、セントジョーンズワートの睡眠改善効果に関する研究も発表されています。

1994年にドイツ企業AFBパレクセルの研究グループは、12人の健康な高齢者にセントジョーンズワートを処方して効果を調べました。

被験者にセントジョーンズワートから抽出したLI160という薬剤300mgを1日3回・4週間服用させて脳波を測定したところ、深い眠りが長くなったと報告しています。[15]

また1998年、イギリス・オックスフォード大学の研究グループが健康な被験者にセントジョーンズワートを処方し、睡眠ポリグラフ検査を行なったところ、レム睡眠(眼球が動く睡眠)に入るまでの時間が長くなりました

うつ病患者はレム睡眠に入るまでの時間が短くなり、睡眠途中や早朝に目覚めてしまうため、研究グループはレム睡眠の開始を遅らせるセントジョーンズワートには抗うつ効果があると結論づけています。[16]

さらに2000年、スイスのバーゼルにあるUPKの研究者が高齢のうつ病患者に対してLI160を6週間投与したところ、徐波睡眠(ノンレム睡眠の深い眠り)が確認されました。[17]

2006年にヨーロッパの神経精神薬理学の学術誌に掲載された論文では、20人の健康な被験者にセントジョーンズワート60mg、バレリアン28mg、パッションフラワー35mgの混合薬を1日3回処方して効果を検証。

被験者は最初の睡眠サイクルで寝つきがよくなり、2番目の睡眠サイクルでノンレム睡眠が長くなって、気分や睡眠への自己評価も改善したそうです。[18]

インド・パンジャブ大学の2007年の研究では、マウスを72時間眠らせずにセントジョーンズワートを投与する実験を実施。

体重1kgあたり200mgのセントジョーンズワートを投与されたマウスは、投与されなかったマウスより体重、活発さ、抗不安効果などで改善が見られました。[19]

そのほか、先述した2009年のケベック大学のホットフラッシュに関する臨床試験では、セントジョーンズワート900mgを三か月間服用したグループの睡眠の問題も大幅に改善しています。[20]

また、先述した2012年ジュンディーシャープール医科大学の臨床試験でも、セントジョーンズワートを服用したうつ病患者の睡眠の質が改善し活力が増加しました。[21]

 

まとめ

以上見てきたように、セントジョーンズワートは欧米で古くから活用されてきました。

傷に塗る薬としても、うつ病やホットフラッシュの治療のための飲み薬としても効果が研究され、科学的に確認されています。

セントジョーンズワートの睡眠改善効果も確認されており、うつ病やホットフラッシュ治療の研究とともにさらに研究が進むでしょう。

ちなみに服用量ですが、セントジョーンズワートの臨床試験での使用量は1日300mg~1200mgが多く、最長12週間連続で服用しています。

ただし、セントジョーンズワートはドイツでは医薬品として指定を受けており、かなり薬に近い作用と副作用がありますので、注意が必要です。

以下、アメリカ国立補完統合衛生センター(NCCIH)のホームページにもとづいて、セントジョーンズワートの副作用をまとめました。[22] 

  • 薬剤の効果を弱める

抗うつ剤、経口避妊薬、シクロスポリン (臓器移植関連)、心疾患薬、HIV感染症治療薬、抗がん剤、抗凝固剤(血液希釈剤)、スタチン類(コレステロール低下)

  • 抗うつ剤やセロトニン関連薬剤との併用による重篤化の危険
  • 妊娠中・授乳中のセントジョーンズワート摂取リスク

ネズミの動物実験での先天異常、乳児のせん痛(発作的な腹痛)や眠気、ぐずり

  (ただし、母子ともに副作用がなかったという臨床試験もあります[23]

  • その他

日光過敏症、不眠症、不安、口の渇き、めまい、胃腸の不良、疲労、頭痛、性的機能不全など 

なお、日本の厚生労働省もNCCIHのホームページをほぼ全文和訳して注意喚起しています。[24]

他の医薬品やサプリを使用している人は、セントジョーンズワートサプリを使用しても問題ないか医師に確認すべきです。

特に薬の処方を受けている人は、主治医としっかり相談しましょう。

セントジョーンズワートの使用は他のサプリよりも慎重に検討すべきですが、健康な被験者を対象とした臨床試験では、他の抗うつ薬よりも副作用が少ないという研究も複数見られます。

セントジョーンズワートの睡眠改善効果に興味がある方は、他のサプリや薬との相性を確認した上で、1日300mgから試してみてはいかがでしょうか。

 

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