コエンザイムQ10の6つの効果を臨床データから解説

公開日:2022/06/03
更新日:2022/06/07

近年、コエンザイムQ10が美容化粧品などに配合されているのをよく目にしますね。
しかし、コエンザイムQ10は美容以外にもさまざまな効果があるとされているのです。
今回は、コエンザイムQ10の6つの効果を臨床データから解説します。

  • 記者 WRITERSTERON編集部
    ニュース担当

コエンザイムQ10とは?

 健康が気になる人なら、どこかでコエンザイムQ10という成分の名を聞いたことがあるのではないでしょうか? 

コエンザイムQ10は人体で自然に生成される成分で、炭素と水素と酸素で構成された有機化合物です。

CoQ10、ユビキノン、ユビデカレノンなどと呼ばれる場合もあります。

人体で生成されるので正確にはビタミンではありませんが、ビタミンQと呼ばれたことも。

コエンザイムQ10は体内の大部分の組織に存在しますが、心臓、肝臓、腎臓、すい臓に多く、肺では少なめ。

コエンザイムとは「補酵素」で、酵素の働きを助けて体内の代謝を促す物質です。

コエンザイムQ10は細胞を成長させ、健康に保つエネルギー(ATP)を生み出すだけでなく抗酸化作用もあり、活性酸素がもたらす害から細胞を守るためにも使われます。[1]

この記事では臨床データに基づいて、コエンザイムQ10の多様な効果をご紹介いたします。

  

コエンザイムQ10の効果6つ

では、実際のデータをもとに効果を確認していきましょう。 

 

1. 運動のパフォーマンスを高める

コエンザイムQ10は運動の効率を高めます。

 大阪市立大学の研究グループは2008年の臨床試験で、17人を3グループに分け、コエンザイムQ10を300mg、100mgまたはプラセボ(偽薬)を8日間摂取させた上で自転車エルゴメーター(エアロバイク)での運動の成績を測定。

すると、コエンザイムQ10を300mg摂取したグループの最高速度の改善幅がプラセボグループより大きくなり、主観的な疲労度も少なくなっていました。[2]

 2010年、トルコのセルチュク大学の臨床試験では、15人のデスクワークの男性が8週間にわたってコエンザイムQ10を100mgまたはプラセボを飲んで、ウィンゲートテスト(自転車を30秒間全力でこぐテスト)を実施。

その結果、疲労度では差がありませんでしたが、平均出力はコエンザイムQ10を摂取したグループが優りました。[3]

また、2022年に上海申花(シェンファ)FCやバリャドリッド大学に所属するスペインの医師たちが、コエンザイムQ10の運動やスポーツでの効果に関する研究をレビューしています。 

59件もの研究で合計100回もの臨床試験が行われており、その内63件でポジティブな効果が認められ、34件は効果なし、3件でネガティブな効果があったとされました。

スポーツや運動のパフォーマンスで25件がポジティブ、18件が効果なしとされています。

筋肉へのダメージや疲労の原因となる酸化については、17件が抗酸化作用にポジティブ、6件が効果なし、2件がネガティブでした。[4]

スポーツや運動でのコエンザイムQ10の効果が大変注目され、期待されてきたのが分かりますね。

 

2. 脳の衰えや偏頭痛を防ぐ

コエンザイムQ10は頭脳の働きにも必要な成分です。

筑波大学、順天堂大学、大阪大学などの研究グループは、6,000人にのぼる中高年の血中コエンザイムQ10濃度を調べ、認知症患者の血中濃度が低い傾向があるという調査結果を2014年に発表しました。[5]

アルツハイマー病やパーキンソン病でも同様の相関関係が見つかっており、コエンザイムQ10を使う療法の研究が続いています。 

2002年にカリフォルニア大学サンディエゴ校では、80人のパーキンソン病の初期患者にコエンザイムQ10を16ヶ月間処方する実験が行われ、症状の進行を遅らせる効果が確認されました。[6]

ハンチントン病治療では脳内の乳酸が病気を進行させると考えられていますが、コエンザイムQ10を360mg・2ヶ月間服用した患者の脳内の乳酸が減少したという臨床試験があります。[7] 

フリードライヒ運動失調症という名の、神経系を傷つけ筋肉の衰弱や言語障害や心臓疾患を引き起こす遺伝性疾患でも臨床試験が行われ、コエンザイムQ10とビタミンEとの併用や[8]、イデベノンというコエンザイムQ10の類似体の長期服用には効果があると結論付けられました。[9]

 ただし、アルツハイマー病では臨床試験で人間の患者がコエンザイムQ10やイデベノンを飲んでも目立った効果が証明できていません。[10]

2020年のイギリスの研究グループによるレビューは、その理由として、コエンザイムQ10は分子が大きく水に溶けにくいので、血中濃度が上がっても、血液脳関門(BBB)を越えて脳に届きにくいという見解を示しています。[11] 

また、コエンザイムQ10は複数の臨床試験で偏頭痛の緩和や予防にも役立つと確認されている成分です。

例えば2007年のアメリカのシンシナティ小児病院の研究では、ひんぱんな頭痛に苦しむ子ども1,550人のコエンザイムQ10濃度は通常より32.9%低く、3ヶ月程度コエンザイムQ10を服用させたところ、頭痛の頻度も症状も緩和しています。[12] 

コエンザイムQ10は健康な肉体だけでなく明晰な頭脳を維持するのにも有益なようです。

  

3. 精力増進、不妊治療に役立つ

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コエンザイムQ10は精力増進と男女両方の不妊治療にも役立ちます

 ルビーラ・イ・ビルジーリ大学などのスペインの研究チームは2018年にレビューを行い、28件の研究から男性の精力増進や不妊治療に関する様々な成分の効果を確認。

コエンザイムQ10に関する研究はその内5件で、3ヶ月以内の短期では効果がないですが、3~6ヶ月間200~300mgのコエンザイムQ10を服用すると、精子の量や運動性、正常な精子の割合が増加すると結論付けました。[13]

2020年にはギリシャのテッサロニキの警察病院や大学の研究グループが不妊治療中の女性に対するコエンザイムQ10の効果をレビュー。

449人に対する5件の試験では、コエンザイムQ10を服用した女性の妊娠率が28.8%に上昇したと報告しています。

なお、コエンザイムQ10を服用しなかった女性の妊娠率は14.1%でした。[14]

 

4. がんの治療に役立つ

 コエンザイムQ10は細胞を傷つける酸化を防止するため、がん治療でも役立っています。

インドのマドラス大学で2007年に行われた臨床試験では、通常の治療を受けつつコエンザイムQ10を100mg配合したサプリを飲んだ乳がん患者は血液中の腫瘍マーカー(がん細胞の活動で発生する物質)が同じ治療だけを受けた患者より少なくなりました。

すなわち、再発や転移のリスクが低くなるのです。[15]

他にも、コエンザイムQ10を300~400mg摂取した肝臓がん患者の腫瘍マーカーの血中濃度や皮膚がん患者の再発率が下がるなどの効果が報告されています。[16]

 

5. 心不全の治療にも役立つ

コエンザイムQ10は心不全の治療にも役立つ成分です。

うっ血性心不全(心不全で血液の流れが悪くなり、息切れやむくみなどが起こる)が進むと心筋の中のコエンザイムQ10が減少することが知られており、コエンザイムQ10を摂取すると、心臓が血液を送り出す機能(駆出率 、一回拍出量、心拍出量)が改善すると臨床試験で確かめられています。[17]

2014年、デンマークコペンハーゲン大学などの国際研究チームの研究では、420人の心臓病患者を被験者として2年間にわたって臨床試験を行い、コエンザイムQ10の効果を調べました。

通常の治療に加えてコエンザイムQ10を100mg、1日3回摂取したグループでは、2年後の心臓や血管の病気での死亡率は9%にとどまりましたが、プラセボを摂取したグループでは16%に。[18]

コエンザイムは心臓が弱い人にも効果がありそうですね。

 

6. 美肌効果もある

美肌効果

コエンザイムQ10は塗り薬として使えば肌を美しく保つ効果も期待できる成分です。

コエンザイムQ10はATP生産をうながして細胞の代謝を高め、抗酸化作用もあるだけでなく、コラーゲン生成もうながします。[19]

2008年、日本の常盤薬品工業の研究グループが31人の女性に対する臨床試験を行いました。

コエンザイムQ10を1%配合したクリームを5ヶ月間肌に塗ったグループは「しわスコア」が改善し、さらにはコラーゲンを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)という成分の生成も抑制されたと報告。[20]

2015年にはスロベニアのコスメティックス研究所などの研究グループも34人の中高年女性に臨床試験を行い、コエンザイムQ10とコラーゲンを配合した美容液を使用したグループのしわスコアや肌の質が改善したことを明らかにしています。[21]

 

コエンザイムQ10で健康を維持しよう

以上、コエンザイムQ10の効果を見てきました。

コエンザイムQ10はエクササイズの効率アップ、明晰な頭脳、頭痛からの解放、精力増進、不妊やがんや心不全の治療、美肌など、多様な用途で役立っています。

コエンザイムQ10不足が多様な分野での健康問題と深く関わっていることも分かりました。

健康維持のために確実に摂取したい成分ですね。

コエンザイムQ10の使用量については、2022年のレビューでは59件の研究では30mgから300mg程度、多くの試験で200mgから300mgが被験者に提供されたとしているのが目安と思われます。[22]

コエンザイムQ10は魚、肉、ピーナツ、ごま、大豆、シソなどに含まれますが、イワシでも100gあたり約6mg、牛肉でも100gあたり約3mgしか含まれていないので[23]サプリでないと十分摂取するのは難しいでしょう。

副作用については、アメリカ国立がん研究所(NCI)が以下を列挙しています。[24]

  •  肝酵素値の上昇
  • 吐き気
  • 胸焼け
  • 頭痛
  • 腹痛
  • めまい
  • 発疹
  • 不眠
  • 疲労
  • イライラ感
  • 光過敏

これだけ見るとこんなにたくさんあるのか、と心配になりますが、日本の厚生労働省の医療関係者向けホームページにはコエンザイムQ10の「重篤な副作用は報告されていません」とあります。

また、「軽度な副作用が起こる可能性」として、「不眠や消化不良など」に言及するにとどめていますので、危険性は低いとみてよさそうです。[25] 

2002年のカリフォルニア大学サンディエゴ校の臨床試験でも1日1,200mgを16ヶ月服用しても問題はありませんでした。[26] 

ただし、以下のような懸念材料がないわけではないので注意が必要です。

上記アメリカ国立がん研究所のホームページによれば、がん治療とコエンザイムQ10の長期併用の副作用の検証はされておらず、乳がん患者では治療前後の抗酸化サプリの使用は乳がんの再発率を高め、生存率を低下させるかもしれないとして、コエンザイムQ10もその一つとしています。

コレステロール、血圧、血糖値を低下させる薬を服用していると、コエンザイムQ10の効果は低下するかもしれません。

また、血栓を防ぐ薬ワルファリンや糖尿病治療に使われるインスリンの効果への影響もあるかもしれないとのことです。

持病があって治療や薬の処方を受けている方は、コエンザイムQ10を飲んでよいか主治医としっかり相談すべきでしょう。

しかしそのような懸念がなければ、体内のエネルギーを高め、強い抗酸化作用もあるコエンザイムQ10は健康維持に不可欠と言っていい成分ですから、サプリを活用して意識的に摂取する価値は大いにあると思われます。 

以上、臨床データに基づくコエンザイムQ10の効果のご紹介でした。

 

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