ビタミンDとは?筋トレに関する効果6つを紹介

公開日:2022/03/08
更新日:2022/06/01

    ビタミンDとは?

    ビタミン(Vitamin)とはその名の通り「生命(Vita)」に必須の物質です。

    ビタミンDはその中の一種であり、免疫力を高めたり、骨を丈夫にするなどの役割を持つことが従来より知られています。

    それ以外にもがんや糖尿病を予防したり、また女性にとって妊娠しやすい健康な体作りを促す効果があるなど幅広い役割が近年報告されつつあります[1]

    ビタミンDは魚類やキノコ類に多く含まれ、これらの食物から摂取される以外に、皮膚が日光を受けて生合成されるなど体にとって自然な成分と言えます。

    しかしながら、ビタミンDは多くの日本人で不足気味にあることが近年の研究によって報告されています[2]

    特に運動をしている人では欠乏状態になりやすいことも示唆されています。

    一方で、ビタミンDのサプリメントは一般に店頭に並んでおり、これを摂取することで補填が簡単に可能です。

    問題は本当にビタミンDの摂取が効果を持つのでしょうか。

    本記事ではビタミンDが果たす効果を、骨・筋肉・脂肪に注目して紹介します。

    その後、免疫や最近問題のコロナに関する効果を紹介し、最後に筋肉増加に関するホルモンであるテストステロンとの関係も載せています。

     

    ビタミンDの効果7つ

    では実際にビタミンDの効果を臨床試験を元に解説していきます。

     

    1. 骨を丈夫にする

    「カルシウムをとると骨が丈夫になる」とどこかで聞いたことはありませんか?

    これは一般にカルシウムが骨の成分となるからですが、一方でビタミンDがカルシウムの吸収を促進することはご存知でしょうか?

    実際にビタミンDをとることで骨が丈夫になるとの研究報告があるので、それをまずはじめに紹介しましょう。

    ニュージーランドの名門大学(University of Auckland)から近年発表された論文では、約4000人のデータを統合的に使って、ビタミンDの骨への作用が解析されました。

    その結果、ビタミンDだけの摂取では骨への作用はないことが示されましたが、ビタミンDとカルシウムの同時摂取において骨を強くすることが示唆されました[3]

    また、ビタミンDは400~800 IU/1日(40 IU ≒ 1 μgですので、10 μg~20 μg/1日)、カルシウムは1000~1200 mg/1日を継続的に摂取することで、成人において骨折のリスクを7%減少させるということです[4]

    さらに、近年ではビタミンDがなぜ骨を丈夫にするのか細胞生物学的にも明らかとなっています。

    ビタミンDは、腸管(十二指腸など)の細胞にあるビタミンD受容体に結合し、そこでカルシウムイオンチャネルの遺伝子発現を上昇させます。

    その結果、腸管の細胞でカルシウムの吸収が増加し、血中のカルシウムも増加するのです。

    血中で上昇したカルシウムは、骨芽細胞に取り込まれ骨の形成を促進するとともに、また骨の分解過程も抑制します。

    これは、ビタミンDがカルシトニンと呼ばれるホルモンの分泌を増加させることで、破骨細胞の働きを抑制させるためです[5]

    さて最後に適切なビタミンDの摂取量ですが、某販売メーカーのビタミンDが一粒1000 IU(25 μg)ですので、もしサプリメントを摂取するのであれば、一日一粒をカルシウムと一緒に摂取すれば十分ではないでしょうか。

     

    2.筋力の向上

    2000年以降に実施された世界規模の研究において、アスリートはビタミンD欠乏になりやすい傾向があることが明らかとなっています。

    アメリカのアスリートでは研究対象の13.3%でビタミンD欠乏であった一方、割合が多かったイギリスと中東ではなんと約60%がビタミンD欠乏でした[6]

    では、なぜアスリートでビタミンDが欠乏する傾向にあるのでしょうか?

    その理由はRTHと呼ばれるホルモンにあるようです。

    PTH(Parathyroid holmone)は副甲状腺ホルモンであり、激しい運動の際に分泌が高まり血中濃度が上昇します[7]

    PTHは破骨細胞に作用し、骨吸収(骨を分解)を促進させ、血中カルシウム濃度を上昇させます。

    これは、運動時の筋収縮にカルシウムが必要となり、その需要を満たすためだと考えられます。

    一方で、PTHは肝臓にある酵素(1-α-hydroxylate)を活性化させ、血中のビタミンDを活性化ビタミンDへと変化させます。

    このようにして、激しい運動をするアスリートではビタミンD消費が多いと考えられるのです。

    では、こうした人たちにおいて、ビタミンDの摂取が何かしらの利益を与えてくれるのでしょうか?

    2013年の研究(Liverpool John Moores University)において、イギリスの男性アスリート60人およびアスリートでない男性30人を対象に、ビタミンDが筋肉パフォーマンスに与える影響について検証されました。

    ビタミンDは5000 IU/1日 を8週間にわたって摂取しました。

    その結果、プラセボ群(ビタミンDなしの偽薬)に対して、ビタミンD摂取群では血中の活性化ビタミンDが有意に上昇しており、さらに10 mのスプリントタイムと垂直飛びにおいても有意なパフォーマンス向上が記録されました[8]

    以上のことから、普段運動をよくする人はビタミンDが欠乏しやすいこと、またビタミンDの摂取によって運動パフォーマンスが向上することが分かりました。

    今回はアスリートの多くでビタミンDが不足することを紹介しましたが、どうやら普通の人でもビタミンD不足になりやすいことが多くの研究から示唆されています。

    そこで、血中のビタミンD濃度を計測するためのキットは通販で販売されていますし、また内科などでも測定できるようですので、サプリメントを摂取する前にはご自身のビタミンD濃度をこれらの方法で知っておくのもいいかもしれません。

     

    3. 脂肪の貯蓄を抑制

    ビタミンDは骨や筋肉に効くだけではありません。

    従来より、ビタミンDはメタボリック・シンドローム(通称メタボ)の予防に効果的であると考えられてきました。

    また、一方で脂質調整に異常があると、メタボなどの疾患が引き起こされることもわかっていました。

    では、ビタミンDとメタボの関係はどのようになっているのでしょうか?

    2016年、東京の国立国際医療研究センター病院による研究では、血中ビタミンD濃度とメタボの関係について調べられました。

    対象は日本の18歳~69歳の男女1790人で、このうちメタボと判断されたのは約12%(219人)でした。

    そして、メタボ群とそうでない群を比較したところ、メタボ群ではビタミンD濃度が低いことが統計的に明らかとなったのです[9]

    また、この理由として、2017年京都大学から興味深い論文がCell誌に発表されています。

    生物の細胞では、脂肪の元となる脂質をさまざまな方法で調節しており、特にSREBPというタンパク質が脂質合成に重要であることがわかっていました。

    複雑なメカニズムはここでは省略しますが、ビタミンDを細胞に処理することでSREBPの活性化が抑制され、その結果脂肪合成が遺伝子レベルで抑制されることが示されたのです[10]

    このように近年では、ビタミンDと肥満の関係が分子生物学のレベルでも明らかとなってきています。

    分子レベルでの説明がつくことでブラックボックスが晴れ、皆さんもサプリメントを摂取しやすくなったのではないでしょうか。

     

    4. 筋萎縮の抑制

    骨格筋はその名の通り骨格に付着している筋肉で、運動に関わる筋肉です。

    組織のなかで最も大きく、全体重の約40%を占めると言われ、運動だけでなくエネルギー代謝や糖の細胞への吸収にも関わります。

    一方、低栄養や運動不足、加齢などによって骨格筋が萎縮し、その機能が低下する状態になることがあり、一般に「サルコペニア」と呼ばれています。

    サルコペニアは、慢性的なエネルギー消費不足や高血糖状態を引き起こし、さらには肥満や糖尿病を誘発するため、現代医学の重要な問題となっています。

    上で紹介した通り、ビタミンDは筋力と脂肪代謝に関係があることから、サルコペニアとの関連性も示唆されています。

    そこで以下の研究を紹介しましょう。

    アメリカの大学(University of Florida)による細胞学的な研究で、筋萎縮が起こるとき細胞ではFOXO1という転写因子(さまざまな遺伝子の発現を変化させるタンパク質)の発現が上昇していることがわかりました。

    またFOXO1の機能を抑制すると、筋萎縮も緩和することが明らかとなっています[11]

    このことからFOXO1という因子が筋萎縮に重要であることがわかります。

    研究では、さらにレポーターアッセイと呼ばれる手法でFOXO1の機能を抑制する化合物の探索(520種類)をしました。

    その結果、ビタミンDがFOXO1の発現経路を抑制することがわかったのです。

    さらに培養細胞の研究で、ビタミンDが筋細胞のアミノ酸分解を抑制することで筋萎縮を予防することも示唆されました[12]

    アミノ酸はタンパク質の構成要素ですから、この研究結果はビタミンDが遺伝子発現レベルでタンパク質合成を調節していることを意味します。

    以上のように上質な骨格筋のメンテナンスにビタミンDが関わり、その上で正常なエネルギー代謝や糖代謝が成り立っているのです。

     

    5. 免疫力の向上

    免疫応答は、体の外から侵入してきたウイルスや細菌に対し起こる、生存に重要な応答のひとつです。

    その応答は血中や組織内に存在する免疫細胞によって起こります。

    ビタミンDにはこの免疫細胞を活性化させたり、逆に過剰な免疫応答を抑制させたりなど、免疫応答を調整する役割があると考えられています。

    また、カテリジンやディフェンシンと呼ばれる「抗菌タンパク質」の産生を誘導する効果もビタミンDにはあると言われています[13]

    多くの種類の免疫細胞において、ビタミンD受容体が発現していることが分子生物学的な研究で報告されており、ビタミンDと免疫の関係は明らかであると考えられます。

    さて、実際にビタミンDが我々の免疫応答にどう影響するかを紹介しましょう。

    2010年、アメリカの大学(Yale University School of Medicine)から、ビタミンDとウイルス性の上気道炎(風邪)との関係について調べた研究が、著名な科学紙(PLoS One)に掲載されました。

    そこでは約200人の健康な成人に対し、三ヶ月間のあいだ、血中ビタミンD濃度とウイルス性上気道炎の罹患度数を記録しました。

    その結果、ビタミンD濃度が低い人(38 ng/ml未満)では罹患度数が100件であったのに対し、ビタミン濃度が高い人(38 ng/ml以上)ではわずか3件で明らかな罹患率の差があることがわかりました[14]

    また、イギリスの大学(Queen Mary University of London)によるメタ解析では、ビタミンDのサプリメント摂取(毎日または毎週)によって、ウイルス性上気道炎の感染リスクが減少すること、特に血中ビタミンD濃度が低い人ほどその効果が著しいことが報告されています[15]

     

    6. テストステロンの増加

    男性ホルモンのテストステロンには筋肉量の増加を促したり、また精神を安定させる効果があると言われています。

    最後に、テストステロンとビタミンDの関係を簡単に紹介しましょう。

    医療関係者の追跡調査において、男性約1360名の血中ビタミンD濃度とテストステロン濃度が計測され、その関係が解析されました。

    その結果、ビタミンD濃度がある閾値以下(30-35 ng/ml)ではテストステロン濃度との正の相関関係が見られました。

    一方で、閾値以上では相関が見られなかったことがわかりました[18]

    これは、ビタミンD濃度が多ければテストステロンが増加しますが、その濃度が多すぎる場合は効果がなくなるということを意味します。

     

    筋トレ好きはビタミンDを摂取すべき

    これまで見てきたように、ビタミンDは実に幅広い効果を持っています。

    ここで少し俯瞰的に見てみると、これらの効果はどれも筋トレをする人にとっては嬉しいものです。

    骨を丈夫にすればトレーニング中に怪我をしにくくなりますし、免疫力が向上すれば健康にトレーニングを重ねることができます。

    筋力の向上や脂肪の貯蓄抑制については、それ自体が筋トレの目的である人は少なくないでしょう。

    テストステロンについては筋トレによって増加するホルモンとして有名です。

    このように、筋トレ好きが掲げる目標の達成において、ビタミンDはいずれもポジティブな効果をもたらしてくれます。

    ビタミンDが運動をすると欠乏しやすくなり、さらに筋肉の保持に重要であることは、筋トレ好きにとっては重要な考察材料ではないでしょうか?

    筋トレや運動が好きな人は一度ビタミンDに注目し、必要があれば適度にサプリメントを補充してみる必要がありそうですね。

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