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睡眠サプリで人気のアシュワガンダは危険?11の効果と副作用
公開日:2023/01/09
更新日:2023/02/06
体力増強やストレス軽減など、さまざまな効果が認められているアシュワガンダ。
海外ではポピュラーなハーブですが、なぜ日本では医薬品登録され、使用が規制されているでしょうか。
今回はアシュワガンダの効果と副作用について、研究データをもとにお伝えします。
アシュワガンダの摂取を検討中の方はぜひご覧ください。
Contents [目次を開く]
アシュワガンダとは?
近代医学が作りだした薬やサプリが睡眠にいいとは限らない。
伝統医学で活用されてきた成分の方が効果があるかもしれない。
そんな風に思った経験がある人は多いのではないでしょうか?
アシュワガンダもそんな期待が集まるハーブの一つです。
アシュワガンダは、別名ウィザニア、ウィタニア、インドニンジンとも呼ばれるインド原産の低木。
サンスクリット語で「馬のにおい」を意味するそうで、独特のにおいがあります。[1]
インドの伝統医学アーユルヴェーダで古くから活用され、欧米でも睡眠、抗ストレス、抗老化のためのサプリが製造販売されている成分です。
日本でも2012年の産業技術総合研究所の新技術説明会で報告が行われ、一層注目されています。
産業技術総合研究所によれば、アシュワガンダは「アーユルヴェーダの女王」とさえ呼ばれていて、抗がん、抗老化、抗ストレスなどの効用が科学的に解明できたとのことです。[2]
インドの伝統医学で高く評価されている上に、科学的裏付けもあるとなると、サプリを使ってみたくなりますね。
しかし、厚生労働省は必ずしもそうは思っていないようです。
国立の医薬基盤・健康・栄養研究所が運営するHP「健康食品の素材情報データベース」に掲載されたアシュワガンダの記事では、「有効性」について「人においては信頼できる十分な情報が見当たらない」という手厳しい評価が下されています。[3]
また、「健康食品との因果関係が疑われる健康被害」のページでは、インドで「“天然ハーブ薬”と謳った製品」を摂取して「動悸、倦怠感、低血圧、心室不整脈、心房ブロックなどの心毒性を示した症例」が12件あり、そのうち2件がアシュワガンダとのことです。[4]
日本で健康被害はないか検索してみると、厚生労働省と埼玉県が2021年7月に、シンガポール製のアシュワガンダ含有製品に注意喚起していたと判明。
その名も「ペニソール」という怪しげな男性向け強壮用製品の事例でしたが、実際は鉛中毒による被害で、アシュワガンダそのものとは関係ありませんでした。
ただし、アシュワガンダは日本では(食品として製造販売できない)医薬品成分であり、摂取しないよう呼びかけています。[5]
結局アシュワガンダには効果があるのかないのか?
危険なのか安全なのか?
一般情報を見ていても、すっきりしません。
そこで今回は、アシュワガンダの具体的な効果と副作用を研究データで確認してみたいと思います。
アシュワガンダの睡眠に関する研究データ6個
2021年にマレーシアサインズ大学の研究グループが5件の臨床試験を厳選レビューして、アシュワガンダの睡眠改善効果をしっかり評価していますので、ご紹介します。[6]
1.主観的評価
レビュー対象の臨床試験5件中4件が被験者の睡眠への主観的評価(SQS)を記録し、その全部でアシュワガンダが高く評価されています。
特に、インドの救急医療サービスの医師などによる2020年の臨床試験では、服用者グループはエキス600mg配合カプセルを12週間服用した後、アシュワガンダに平均2.47のスコアをつけました。
これは2(とてもよい)と3(よい)の中間です。
一方プラセボ(偽薬)服用者のスコア平均は4.3。
こちらは4(普通)と5(貧弱)の間ですから、満足度の差は歴然です。[7]
他の3件でも服用者の平均スコアは2.33~3.56で高評価。
被験者への質問票(PSQI)でもアシュワガンダ服用者の得点のほうが高くなりました。
アシュワガンダへの満足度は高いようですが、では何がよいのか、具体的効果を見てみましょう。
2.早く眠れる
まず、アシュワガンダは寝つきをよくする効果が認められており、入眠時間(SOL)を計測した3件全てで結果が出ています。
D.Y.パティル大学を中心とした2021年の臨床試験では、アシュワガンダ600mg入りカプセルを飲んだ18人の平均入眠時間は8週間後に25.93分になった一方で、プラセボを飲んだ18人は32.13分にとどまりました。[8]
3.夜中に目が覚めにくい
服用後の中途覚醒(WASO)も、3件で計測し、全て効果が出ています。
特に2020年に睡眠科学研究所(IISS)などが行なった臨床試験では、アシュワガンダ120mgを6週間服用したグループの中途覚醒は平均70.4分に縮まりましたが、プラセボ服用グループは10分以上長い82.7分でした。[9]
4.たくさん眠れる
入眠時間が早くなり、中途覚醒が減れば、トータルの睡眠時間も増えます。
レビュー対象中3件で総睡眠時間(TST)を計測した結果では、アシュワガンダ服用者の方がプラセボ服用者より14~25分程度長く眠れたと報告されました。
5.すっきりとした目覚め
アシュワガンダは睡眠の時間だけでなく、質の向上でも効果が認められています。
マハーラーシュトラEMSの2020年の臨床試験では主観的評価だけでなく、起床時の目覚めも調べました。
評価方法は、すっきり、少し眠い、とても眠い、の三段階評価です。
スコア平均値は、アシュワガンダグループが1.05。
服用者19人中18人がすっきり、1人だけ少し眠いと答えたことになります。
一方プラセボグループ20人の平均は1.35でした。[10]
6.ストレス緩和で安眠効果
アシュワガンダは期待されている通り、ストレス緩和効果も確認されています。
2019年のD.Y.パティル大学の臨床試験では、アシュワガンダ服用グループの不安評価尺度(HAM-A)は10週間後に平均23.59から18.49に改善しました。
一方プラセボグループは23.42から21.53への改善なので、倍以上の効果がありますね。[11]
D.Y.パティル大学は同じ年に医師グループと別の臨床試験も行い、こちらでも服用者の不安スコアと主観的評価が上回りました。
この試験ではさらに、だ液中のストレス物質コルチゾール濃度も測定しています。
アシュワガンダを8週間600mg摂取したグループは平均10.86mcg/dl、 250mg摂取したグループは13.61 mcg/dl、 プラセボグループは15.52 mcg/dlとなり、客観的なストレス緩和効果も実証されました。[12]
これも安眠にとって重要な要素ですね。
以上から、アシュワガンダの成分には様々な睡眠効果が期待できます。
アシュワガンダの副作用に関する研究データ4個
それでは副作用はどうでしょう?
アシュワガンダは、海外の研究では副作用の少ない安全な成分という評価が圧倒的です。
しかし、日本では医薬品成分として慎重な取り扱いが求められています。
なぜなのか、以下で詳細を確認しましょう。
1.主な副作用
アシュワガンダの主な副作用には疲労、発熱、頭痛、胸焼け、下痢、皮膚炎などがありますが、ほとんどの研究で安全だとされています。
マレーシアサインズ大学のレビューでも、5件の臨床試験では深刻な副作用は見つかっていないとしています。
報告があった1件でも150名中、ウイルス性発熱、頭痛、胃酸の逆流(胸焼けなど)が各1名、アレルギー性皮膚炎が2名だけでいずれも軽症でした。[13]
アシュワガンダを摂取してはいけない人々については、2019年にニューヨークのがん研究者たちが「トップ10ハーブ」の検証の中で取り上げています。
まず、前立腺がん患者は、体内のテストステロン濃度が高まるので摂取不可。
また、妊娠中または授乳期間の女性の摂取禁止は健康成分によくあることです。
他には抗けいれん薬類、バルビツール酸塩(鎮静薬や抗てんかん薬)、向精神薬ベンゾジアゼピン使用中も摂取を避けるべきとのこと。
しかし、このレビューでもアシュワガンダは「一般的には安全」と評価しています。[14]
2.大量摂取しても大丈夫?
アシュワガンダの最大摂取量については、2019年インドのタタ・メモリアルセンターで、13人の骨肉腫患者に対する臨床試験が行われました。
この試験では、各患者が摂取量を徐々に増やして摂取可能最大量を確かめてから、30日間その量の摂取を続けて、副作用を確認。
摂取したのはアシュワガンダ400mg配合カプセルで、有効成分ウィザフェリンAが18mg入っています。
摂取可能最大量は最も少ない人で1,600mg(ウィザフェリンA72mg入り)、多い人で4,800mg(同216mg入り)に達しました。
さすがに13人中8人に副作用があり、肝機能検査での異常値5件、疲労1件、発熱1件、発しん2件、下痢1件、むくみ1件がありましたが、いずれも軽症でした。
以上から、アシュワガンダは抗がん治療に有効で安全と結論されています。[15]
3.毒性は要注意
ここまで見てきた海外の研究データからは、有効で安全そうに思えます。
しかし日本では、アシュワガンダは2013年から医薬品成分に区分変更され、食品や健康食品としての製造販売ができなくなりました。
その理由は構成成分ウィザフェリンAの毒性です。
2014年に富山大学の研究チームがアルツハイマー病など神経変性疾患に対するアシュワガンダの効果をレビューし、マウスの50%が死亡する致死量(LD50)が体重1kgあたり80 mgとして、ウィザフェリンAの毒性に注意を促しています。[16]
厚生労働省が2012(平成24)年1月に医薬品成分に変更する決定を行なった[17]のも、ウィザフェリンAの毒性を考慮したからです。
決定と同日に公表されたパブリックコメントへの回答でも、ウィザフェリンAを「毒性の強い成分」と明記し、マウスの致死量は富山大学より厳しく体重1kgあたり54mgと評価しています。[18]
しかし、2012年までアシュワガンダのサプリは日本で製造販売されていましたよね?
海外の評価が甘いと見るか、日本側が慎重すぎると見るか、悩ましいところです。
4.カビ毒混入のリスクも!
毒性があるにせよ海外で流通しているサプリなら、過剰摂取を避ければ大丈夫とも思えませんか?
しかし最近、アシュワガンダにはカビ毒混入の問題も提起されています。
インドのマイソール大学の研究者たちが、2016年にハーブ医薬品原料へのカビ毒(マイコトキシン)混入の調査を行なったところ、憂慮すべき結果が出ました。
インド南部でハーブの製造販売が盛んなマイスール(マイソール)市で、6種類のハーブのサンプルを集めて調べたところ、41種類のカビが見つかったのです。[19]
特にアシュワガンダは全サンプル(100%)から何らかのカビが見つかり、特にアスペルギルス症という感染症を引き起こすタイプの菌が多数見つかりました。
その中でもアスペルギルス・フラブスはやっかいで、強い発がん性のあるカビ毒のアフラトキシンB1(AB1)も作り出すとのこと。
幸いアシュワガンダへのアフラトキシンB1混入量は微量と判定されましたが、他の3種のハーブからはEU(欧州連合)の規制上限を大幅に超える量が検出されたそうです。
ここで注意したいのが、地域ごとの規制の差。
EUでは「ハーブ原料」へのアフラトキシン「B1」単体の含有上限は1kgあたり2μg(マイクログラム、100万分の2g)ですが、インドでは「食品」一般でのアフラトキシン「類」(B1以外にB2、G1、G2なども含む)の混入上限が30μg/kg。
そして日本は、インドと同様に「食品」一般へのアフラトキシン「類」を規制、ただし上限が10μg/kgとのことです。[20]
問題の3種への混入量はグドゥーチーが104.19μg/kg、ショウブが13.73μg/kg、ナツメグが12.03μg/kgですから、インドで規制されるのはグドゥーチーだけ。
日本では他の2種のハーブ原料も食品衛生法違反となりますが、個人輸入などですり抜けてしまう恐れがあるわけです。
さらに、別の問題も見つかりました。
アシュワガンダのサンプルは3ヶ所から採取されましたが、そのうち1ヶ所のサンプルのカビ混入量が、WHOの許容量(1gあたり平均10,000個)を上回っていたのです。
これでも他のハーブより少ないのですが、採取場所によって3分の1の確率で、使ってはならない原料に当たってしまいます。
アシュワガンダ成分の短期的な安全性を強調する研究はとても多いのです。
しかし、ハーブ原料への有害物質混入と、発がん性物質による長期的リスクは盲点だったようです。
日本でも、鉛中毒による健康被害の報告がありましたね。
成分そのものの医学的作用だけでなく、鉛やカビなど原材料への混入物や、製造工程から生じる問題もチェックしないと安心して摂取できません。
しかし海外のアシュワガンダサプリが、どこで採れたどんな材料から、どう作られているか、日本から確認するのは極めて困難と思われます。
まとめ:アシュワガンダ入りサプリはやめておこう
アシュワガンダの成分そのものは睡眠改善などの効用が期待できそうですが、異物混入リスクを考えると、海外のサプリはおすすめできません。
しかしアシュワガンダは区分変更後も日本で栽培され、医薬品として製造販売されています。
どうしても摂取したい方は医師と相談した上で、栽培の段階から日本産の医薬品を服用される方がよいでしょう。
サプリはあくまでも健康のため。
品質をしっかり確認した上での服用をおすすめします。
※記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。サイトの情報を利用し判断及び行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。
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