精液の量を増やすと不妊は解消する?(男性の妊活)

公開日:2019/01/22
更新日:2022/02/09

精液の量を増やす方法のアイキャッチ

「精液の量を増やせば不妊が治るかな…」とお悩みではありませんか?不妊で悩む夫婦は15%と言われますが、世界保健機関(WHO)の発表によると男性側に不妊原因があるケースは24%と報告されています。今回は、精液は何でできているのかを始め、量を増やすポイントや、精液と不妊解消の関係性を深堀します。

  • 記者 WRITER
    松塚早苗(栄養士)

精液は何でできている?

精子を構成する成分

男性である限り切っても切れない精液の存在ですが、実際どんな成分でできているのでしょうか。精液ができるまでのプロセスや特徴、組成成分の割合を見てみましょう。

精液は何でできているのか、まずは医学的な定義を以下に引用します。

精液は、精巣上体、精管、精嚢、前立腺、尿道球腺などに由来する分泌液と精子との混合物である[1]

少し難しい印象がありますね。簡単に言うなら、液体状の分泌液に精子が混ざったものが精液です。精子は精巣(睾丸)で育まれ、副睾丸(精巣上体)や精管を移動して成熟した精子は精漿(せいしょう)という分泌液と混ざり、尿道を通って精液として放出されます。

精液は乳白色でやや粘りのあるアルカリ性です。世界保健機関による精液の量の基準値は1度の射精で約1.5ml以上ですが、人によってはそれ以上だったり、同じ人でもその日によって量が違ったりと、ある程度の幅があります[2]

 

精液を構成する2つの成分

精液の組成成分は、「精漿」と「精子」の2つに大別されます。その割合は精漿が95~99%、精子が残りの1~5%です。

精漿と精子の特徴を見てみましょう。

精漿

精漿は、前立腺からの分泌液と精嚢(せいのう)からの分泌液の総称 で、黄味を帯びたタンパク質性の液体です。前立腺液が15~30%、精嚢液は70%を占めています。

精漿には、タンパク質分解酵素のプロテアーゼや神経伝達物質のほか、精子の運動促進などに関わる亜鉛、精液を弱アルカリに保つためのクエン酸、精子のニオイの元となるアミン、ステロイドなど、多くの物質が含まれています。

【精子】

精子のほとんどはタンパク質で構成され、デオキシリボ核酸という遺伝情報に関する生体物質を含む生殖細胞です。

1度の射精時の精液に含まれる精子の数は2~3億個。女性の膣内は酸性度が高いため、アルカリ性の精漿に守られています。

精液中に精子がほとんど無ければ、無精子症と診断されます。当然ながら受精率は極端に低下するので、妊娠を望む場合は治療が必要です。

 

射精頻度と精液の量の関連性

精液が蓄えられた副睾丸は約3日程度で満タンになるため、この段階で射精すると精液量は多い状態です。反対に、1日に数回射精すると精液の量は少なくなります。

精液の量を増やす決め手は精嚢分泌液

精液を増やすポイント

精嚢分泌液は精液の70%にあたるので、精液の量を増やすには精嚢分泌液を増加させるのが効果的と考えられます。

興奮によって大脳に刺激が入ると分泌が促進されるため、短時間よりも長時間に渡り興奮の刺激を与えれば、精液の量が増えることになります。

精液の量を増やすなら、オナニー時はいきなりペニスを刺激せず、まずはイメージ力によって勃起状態を継続してみてください。また、あえて視覚情報を断つことでもイメージ力は上がります。

 

精液の量を増やすには禁欲

オナニー禁止

精液の量を増やすためには、一定の禁欲期間を設けるのが有益だと考えられています。

世界保健機関の研究によると、2~7日間射精をしない期間を設けることを推奨していますが、ヨーロッパの北欧人類学協会では、わずか3~4日の短い期間で十分としています。

精液の量を増やしたいとお考えの方は、上記の日数が一定の目安になるかと思います。

また、世界保健機関による「1日1回2週間に渡り射精すると精液にどんな影響を与えるのか」という研究からは、初日の評価時と比べた精液の量と精子の数は減っていることがわかりました。

興味深いことに、毎日射精しても、精子の濃度や活動量、前進力など、精子の質に関連するポイントは大きな違いが見られなかったということです。

 

量を増やすよりも精子の質が大切

量よりも質が大切

「精液の量が少ないと不妊につながるのでは?」と思いがちですが、精液の量が減少しても精子自体の質には影響がない、といった研究結果があることから、『精液の量を増やすより精子の質を高める』ことのほうが、不妊症の解消に効果的であることが見えてきます。

不妊症の解消には、精液中の精子濃度や数も関係しています。世界保健機構による精子濃度の正常値は1,500万/ml以上、総精子数は3,900万以上とされているので、やはり3日間程度の禁欲が必要です[3]

逆に、射精しなければどんどん精子の数が増える、というわけではなく、精子の質、つまり精液としての質が低下する可能性があることは知っておいてください[4]

 

精液の質を上げる5つの方法

精液の質を上げるには、精子の数と活動力を高める必要があります。そのためには、どんな点に注意して生活すればよいのか見ていきましょう。

 

定期的な運動

定期的な運動

不妊症に悩む男性は、なによりも先に定期的な運動を心がける必要があります。

運動は生活習慣病のリスクを下げたり、筋力をつけたりできますが、単にそれだけのことではありません。

運動するとテストステロンという男性ホルモンの分泌が促進され、生殖能力が高まります。その結果、出生率を高めるのに役立つからです。

テストステロンは精巣で分泌されますが、不妊症男性の18~34%に、男性ホルモンの低下がみられます。

 

ストレスマネージメント

ストレスマネージメントが

ストレスマネージメントをすることで、生殖能力を高めて不妊を解消する可能性がグンと高まります。

ストレスは性的な満足度を低下させるばかりか、コルチゾールというホルモンが悪影響を受け、テストステロンの分泌を妨げる可能性があるのです。

「ストレスを解消するために何かしなければ…」、という強迫観念ではなく、ゆったりとした気持ちや楽しいと思える時間を作りましょう。

 

亜鉛などのミネラルを摂取する

亜鉛等のミネラル成分の摂取

適切な量の亜鉛を摂ることは、生殖能力に関わるテストステロンの合成に欠かせません。

亜鉛が欠乏すると、精巣で作られる精子形成に障がいを与え、精子減少症や血清テストステロン濃度の低下につながります。さらには、精巣の委縮を誘発すると考えられています。

亜鉛などのミネラルを豊富に含む肉や魚、卵、貝などの動物性食品を意識して食べましょう[5]

 

ビタミンCやビタミンDを摂取する

ビタミンCやDの摂取

精液の質を高めるには、ビタミンDやビタミンCを摂取するのが効果的です。

ビタミンCには抗酸化作用があるため、十分に摂取することで細胞の老化や損傷を予防するのに役立ちます。不妊男性にビタミンC1,000mg含有のサプリメントを1日2回、2ヶ月間摂取してもらった研究では、精子の運動性向上や精子数の増加がみられ、変形した精子細胞の割合は55%減少したことがわかりました。ビタミンCはストレスが多い人ほど多く摂る必要があります。柑橘類やイチゴなどの果物、ピーマン、いも類などを使ったメニューを心がけましょう。

ビタミンDは、テストステロン値を高めるのに役立つと考えられています。ビタミンD欠乏症の男性に、毎日75㎍のビタミンD サプリメントを1年間摂取してもらった研究では、テストステロン値が約25%上昇したことがわかりました。

ビタミンDは、カツオ、あんこうの肝、しらす干しなどの魚類やきくらげに多く含まれています。

 

サプリメントを服用する

サプリメント

精液の質を高めて不妊解消に役立つ成分として、アミノ酸の1種のアルギニンやシトルリンが挙げられます。

アルギニンを多く含む食材として、大豆やイカ、牛肉、アジ、チーズなどが有名です。シトルリンはスイカやゴーヤなど、ウリ科の食材に多く含まれています。

精液の質の向上に食生活を見直したい方は、こうした食材を積極的に使うことをおすすめします。

しかし、忙しくて毎日のメニューに時間を割けない方も多いかと思います。食事でアルギニンやシトルリンを十分に摂れない場合は、サプリメントを活用するのも1つの手段です。

アルギニンやシトルリン、ロブリン、ピクノジェノール®が含まれたサプリメントを使った研究で、精子の量や濃度、運動性、活力が著しく高まったとの報告もあります。

 

精液の質が改善されるまでの時間は

精子が作られるのに必要な時間

精子は精祖細胞と呼ばれる細胞から作られます。精巣の中にある精細管でホルモンの影響を受け、細胞分裂を繰り返しながら徐々に精子に成長していくのです。その期間は、なんと74日間。その後、隣接する副睾丸(精巣上体)に運ばれ、生理学的および生化学的変化を受けて成熟し、運動性などの受精能力を得ます。

さらに精子は14日間かけて40cmの精管を通って移動します。この頃にはいつでも射精できる状態です。

つまり、精祖細胞が受精能力を持った質の高い精液になるまでには、3ヵ月程度かかるというわけです[6]

 

まとめ:量を増やすよりも質を高める事が大切

精液の量を増やすよりも精子の質を上げる

精液は、分泌液と精子とが混ざった液体です。毎日精液を放出すると精液の量は減ることから、精液の量を増やしたい方は数日間禁欲してみると効果が期待できるでしょう。しかし、精液の量が増えたからといって不妊解消に役立つわけではありません。大切なのは受精につながる数や活動力などを備えた、質の高い精子です。

精液としての質を高めるには、ビタミンやミネラルのほか、アルギニンやシトルリンといったアミノ酸も必要です。また、多くの研究結果からは、食事だけでなく運動やストレス解消など、生活全般の見直しも不妊の解消に効果的なことがわかっています。

食事だけでは摂りきれない場合は、上手にサプリメントを活用してみましょう。

※記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。サイトの情報を利用し判断及び行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。

  • 記者 WRITER松塚早苗(栄養士)

    「体内から美髪」をコンセプトとした美容院を経営。「毛髪分析」の結果を基に、ひとりひとりの状態に合わせた栄養指導から頭皮ケアまで行い、的確に美髪・薄毛改善に導いている。
    現在は、美容院経営の傍ら、身体と栄養に関する情報をネットにて発信している。

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