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乳酸菌L.カゼイ・シロタ株とは?臨床試験を基に7つの効果を徹底解説
公開日:2022/07/29
最近、ヤクルト1000が入手困難で話題になっていますね。
驚異的な売れ行きを誇る秘密は、乳酸菌L.カゼイ・シロタ株にありました。
しかし実際、乳酸菌L.カゼイ・シロタ株にはどのような効果があるのでしょうか。
今回は臨床データをもとに、乳酸菌L.カゼイ・シロタ株の効果を解説していきます!
Contents [目次を開く]
乳酸菌L.カゼイ・シロタ株とは?
最近ヤクルトの新製品「ヤクルト1000」が大人気だそうです。
従来の腸内環境改善だけでなく、ストレス緩和や睡眠の質を高める効果もあると評判で、宅配でも店頭販売でも入手できない地域さえあるとのこと。
効果を実感した人や転売目的の人が、宅配に行こうとするヤクルトレディを待ち伏せして売ってもらおうとするなんて話もSNSで話題になっています。
ちなみにヤクルト1000が宅配用商品で100ml入り、商品名Y1000が店頭販売品で110ml入りです。
今までのヤクルトと何が違うのか、気になりますよね?
違いはヤクルトの有効成分、乳酸菌シロタ株(L.カゼイ YIT 9029)の含有量です。
ヤクルト1000もY1000も、1mlあたりシロタ株が10億個も入っています。
100ml入りのヤクルト1000はシロタ株1,000億個入り、110ml入りのY1000は1,100億個入りというわけです。
よく見かけるNewヤクルト(65ml入り)にはシロタ株が200億個入っているので、容器には200という数字が書かれています。
ヤクルト400も数字の1億倍、400億個のシロタ株が入っている、という意味です。
乳酸菌L.カゼイ・シロタ株(ラクトバチルス・カゼイ・シロタ株、LCS)は、ヤクルトの創始者で医学博士の代田稔(しろたみのる)氏が1930年に発見し培養したので、ヤクルト菌とも呼ばれます。
乳酸菌シロタ株はトクホを取得するほど信頼性の高い成分です。
トクホは「特定保健用食品」の略。
からだによい「保健効能成分」を含み、「特定の保健の目的が期待できる」と表示することが許される食品です。
トクホの食品として販売するには、有効性や安全性について国の審査を受けて許可を得る必要があるので、信頼性が高いと言えます。[1]
消費者庁のホームページにはトクホの許可品目をまとめたエクセル表があり、乳酸菌の「L.カゼイ」では27件掲載。
そのうち26品目の有効成分がL.カゼイ YIT 9029(シロタ株)で、ヤクルトやジョアなどのヤクルト製品です。
ヤクルト以外の1件は日清ヨーク株式会社の乳酸菌飲料「ピルクル」で、有効成分はカゼイ菌(NY1301株)です。
では、乳酸菌L.カゼイ・シロタ株は一体どんな働きをする成分なのでしょう?
「シロタ株は生きたまま腸に届く」というフレーズをご存じの方も多いのではないでしょうか。
シロタ株は飲んでも胃で消化されず、腸を通る時にビフィズス菌などの良い菌を増やし、大腸菌などの悪い菌や発がん物質などを減らす作用があると明らかになっています。[2]
しかし、腸で働くはずのシロタ株がなぜストレスや睡眠にいいのか、不思議ですよね?
そこでこの記事では臨床データをもとにシロタ株の効果をご紹介し、特に腸に入ったシロタ株が「脳腸相関」によって睡眠やストレスを改善するメカニズムを徹底解説したいと思います。
乳酸菌L.カゼイ・シロタ株の効果7つ
乳酸菌L.カゼイ・シロタ株は腸内環境の改善だけでなく、さまざまな健康効果も判明しています。
それぞれ臨床データに基づいて説明していきましょう。
1.睡眠の質改善
最近話題のヤクルト1000の睡眠改善効果は、2017年のヤクルト中央研究所などヤクルト関係者と徳島大学が行なった共同研究の成果です。
CBTという試験を受ける予定の徳島大学の医学部4年生が、この臨床試験の被験者になりました。
CBTは医学生たちが臨床実習を行うために必須の試験なので、被験者たちはストレスを抱えてよく眠れないはず。
そこで被験者たちに、試験前後の11週間にわたって、ヤクルト1000またはシロタ株を含まない類似品のプラセボ(偽薬)100mlを飲み続けてもらい、睡眠の質を比較したというわけです。
その結果、主観的にも客観的にもシロタ株の効果が現れました。
まず質問票への回答では、ヤクルト1000を飲んだ48人のグループは「すっきりした目覚め」と眠れた時間の両方で、プラセボを飲んだ46人のグループよりも平均スコアが高い結果に。
また、脳波測定でも、ステージ3のノンレム睡眠の時間とデルタパワーを比較すると、ヤクルト1000グループのほうが11週間の服用期間全体でプラセボグループを上回りました。
ノンレム睡眠は眼球が動かない眠り、デルタパワーはゆっくりとした脳波(デルタ波)の量を指し、両方とも深い眠りに不可欠です 。
こうしてシロタ株の睡眠改善効果が明らかになり、ヤクルト1000が商品化されたのです。[3]
しかし、ちょっと待って下さい。
腸に届いて働きかけているはずのシロタ株が、どうやって脳波や眼球の動きに影響するのでしょうか?
ここで大事なのが、「脳腸相関」です。
脳腸相関とは、腸が免疫系・内分泌系(ホルモン)・神経系によって脳とつながり、互いに影響しあっているという考え方のこと。
特に迷走神経を通じて腸から脳へと伝えられる情報が注目されています。[4]
過去の試験結果から、シロタ株が脳腸相関によってストレス物質コルチゾールを抑制したことや、交感神経への刺激を抑制したことが判明しています。
そこで、この試験を実施した研究グループも、シロタ株を摂取した学生たちのストレスが脳腸相関で緩和されて睡眠の質が改善したと考えているのです。
2.ストレス緩和
というわけで、時系列的にはまずシロタ株によるストレス緩和が臨床試験で確認され、それを踏まえて睡眠改善効果も研究が進み、ヤクルト1000が商品化されました。
ストレス緩和に関する臨床試験も、ヤクルト関係者と徳島大学の研究グループが2016年に行なったものです。
この試験でも被験者はCBTを受ける徳島大学医学部4年生で、条件もほぼ同じ。
服用開始6週間後(CBT受験2週間前)に被験者の便の中にあるシロタ株を調べたところ、ヤクルト飲用グループのシロタ株はプラセボグループの1,000倍以上になり、服用終了2週間後にはほぼ同じレベルに戻りました。
また、便の中の細菌を調べると、ヤクルトグループのほうが腸内細菌の多様性があるとわかっています。
これはヤクルト1000のシロタ株が生きて腸に届き、腸内環境を改善した証拠です。
ストレスについては、ストレスの自己評価(VAS)において飲用期間中のヤクルトグループのストレス度はプラセボグループより低いままでした。
だ液中のストレス物質コルチゾールの濃度は、CBT2週間前にはヤクルトグループのほうが高くなりましたが、CBT前日に逆転してプラセボのほうが上回り、終了後も高い状態に。
一方ヤクルトグループはCBT前日には2週間前よりコルチゾール濃度が下がり、終了後もプラセボグループより低くなりました。
さらに腹痛や腹部の不快感の質問回答でも、ヤクルトグループのほうがプラセボグループより良いスコアを維持しています。[5]
こうして、腸に生きたまま届いたシロタ株が腸内環境を整えてストレス緩和に役立ったと確認でき、睡眠改善効果の確認にもつながったわけです。
3.うつや不安の緩和
シロタ株の脳腸相関を通じた働きは、精神疾患の症状緩和にも良い影響を与えます。
抗不安については、カナダトロント大学の研究グループが2009年に慢性疲労症候群(CFS)の患者39人を対象に、シロタ株240億個入りパウダーの効果を調べました。
シロタ株を飲むと、不安に関する評価尺度(BAI)のスコアが、プラセボを飲んだグループより良くなったとのことです。[6]
抗うつについては、2016年にイランの研究グループが臨床研究を行い、うつ病患者がシロタ株20億個などのプロバイオティクス(善玉菌)を含むカプセルを服用すると、うつ病評価尺度(BDI)が改善したと報告しています。[7]
他にも複数の研究がシロタ株の抗うつ効果を報告しています。
マレーシアのサンウェイ大学の研究グループは、2019年に「プロバイオティクス」(善玉菌)のうつ病に対する研究実績のレビューを行い、抗うつや抗不安でのシロタ株のポテンシャルを高く評価しました。
このレビューにはオーストラリア、アメリカ、ポーランドの研究者たちも関わっており、シロタ株への国際的関心が分かります。[8]
4.腸内環境改善で便秘や下痢も改善
シロタ株が腸内環境を改善してお通じの悩みを解消するのは周知の通りですが、念のため臨床データを確認しておきましょう。
シロタ株の便秘への効果については、日本だけでなくドイツ、ベルギー、マレーシアなど世界各地の臨床試験で効果が報告されています。
例えば2003年のドイツ(German Institute of Human Nutrition)の臨床試験によると、シロタ株650億個入りドリンクを飲んだ慢性便秘患者は2週間目から便秘の症状や便の硬さが改善し、4週間後には被験者の89%にポジティブな効果が確認できました。[9]
2011年、ベルギーのヤクルト本社欧州微生物学研究センターで行われた臨床試験でも、シロタ株入りドリンクを飲んだ被験者は、3週間後には硬便の比率が73.7%から36.8%に減るなど、便秘の症状が改善しています。[10]
シロタ株は便秘だけでなく、下痢の症状改善でも効果が確認されているんですよ。
一例だけあげると、2014年に慈恵医大で行われた臨床試験の被験者118人には便秘の人も下痢の人もいましたが、両方とも改善が見られたとのこと。[11]
シロタ株の腸内環境改善効果は安定した評価を得ていると言えましょう。
5.免疫増強
シロタ株には免疫を強化し感染症予防や症状を緩和する効果もあります。
2008年、順天堂大学とヤクルト中央研究所の共同研究では、介護施設の高齢者27人がシロタ株400億個入りドリンクを1日1本飲むと、冬の感染性胃腸炎による発熱期間平均が1.5日に短縮しました。
一方、飲まなかった21人の発熱期間の平均は2.9日です。[12]
2011年、イギリスのラフバラー大学では、長距離レースに参加するアスリートの免疫改善も調査されています。
16週間シロタ株を摂取した42人は、プラセボを摂取した42人より、かぜやインフルエンザなどの「上気道感染症」(URTI)発症率が25%ほど低下し、だ液中の免疫グロブリンA(IgA)も多くなっていました。[13]
ヤクルト中央研究所などの研究グループも、2017年に30歳~49歳の男性オフィスワーカーを対象に同様の臨床試験を行なっています。
シロタ株1,000億個入りドリンクを12週間飲み続けた49人の「上気道感染症」(URTI)発症率は22.4%にとどまり、プラセボを摂取した47人の発症率は53.2%にのぼりました。
発症期間もプラセボグループより短く、軽症だったそうです。[14]
他にもHIV感染者の免疫改善、敗血症患者や肋骨骨折患者の肺炎防止、手首骨折の回復促進など、実に多様な人々の免疫増強、感染防止でのシロタ株の効果が確認されています。
6.抗がん作用
シロタ株には抗がん作用まであります。
2013年、ヤクルト本社中央研究所によるレビューは、シロタ株の抗がんメカニズムとして以下をあげています。[15]
- NK細胞の免疫監視活動(がん細胞攻撃)開始
- 炎症抑制によるがんの増殖防止
- 腸内バランスコントロールで発がん性物質抑制
- 発がん性物質排せつ
抗がん作用の一例をあげると、兵庫医科大学が2005年に大腸がんで手術を受けた398人を対象に臨床試験を行なっています。
シロタ株100億個入りパウダーを飲み続けた192人の2年後のがん再発率は、飲まなかった188人の76%、4年後でも85%に抑えられたとのことです。[16]
7.糖尿病対策でも有効
さらに、シロタ株の摂取が糖尿病対策でも有効だとする臨床試験結果も複数出ています。
ラフバラー大学での2015年の臨床試験は、食べ過ぎによる2型糖尿病に対するシロタ株の予防効果を確認。
1週間の高脂肪高カロリーの食事をさせられた後、プラセボを飲んだ9人の空腹時血糖平均値は10%増加し、インスリン感受性は平均27%悪化しました。
ところが、シロタ株65億個入りのヤクルトライトを毎日2本飲んだ8人は、同じ食生活でもそのような変化はなかったそうです。[17]
日本でも順天堂大学とヤクルト中央研究所の共同研究で、シロタ株摂取で2型糖尿病患者のインスリン感受性や腸内環境の改善に効果があったなど[18]、複数の臨床試験が効果を報告しています。
まとめ
腸内環境改善で知られていた乳酸菌L.カゼイ・シロタ株。
最近の研究では、脳腸相関を通じて飲む人の精神にもよい影響を与え、睡眠の質まで高めるスグレモノであると明らかになったのですね。
その上、抗がん作用や糖尿病対策などの効果もあるとなれば、飲まない手はありません。
安全性については、2018年にヤクルト本社が消費者庁にヤクルト1000を機能性表示食品として届け出した時にも確認しています。
まず、姉妹品のヤクルト400とヤクルト400LTが154億本販売しても「重篤な健康被害」がなく、さらに乳酸菌シロタ株はアメリカでも2012年にGRASという食品の安全性に関する認証を取得しているので安全とのことです。
この認証の取得に使用されたレポートでは、ヤクルト1000の3倍以上の3000億個や3600億個を継続摂取させた試験でも問題なかったそうなので、安心できます。[19]
摂取方法ですが、ヤクルトレディを待ち伏せして困らせたり、ヤクルト製品を求めてお店をさまよったりするよりは、長期保存できるサプリを一定量購入しておくほうが賢明でしょう。
サプリなら糖質も気にせず摂取できます。
乳酸菌は長期間飲用するほど効果があるとされますから、サプリを確保してシロタ株を摂取する習慣ができれば様々な健康効果を実感できるはずですよ。
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