D-アスパラギン酸はテストステロンブースターか? 論争と臨床データに基づく5つの効果

公開日:2022/05/23
更新日:2022/05/30

テストステロンブースターの一種として注目を浴びている『D-アスパラギン酸』ですが、実は効果について様々な論争が起こっています。
結局のところD-アスパラギン酸は筋トレや男性機能に効果があるのでしょうか。
今回は論争と臨床データに基づくD-アスパラギン酸の5つの効果を紹介します。

  • 記者 WRITERSTERON編集部
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D-アスパラギン酸とは?

D-アスパラギン酸とは、人体の各種ホルモンの分泌に影響を与えるアミノ酸で、特に男性ホルモンテストステロンの分泌を促進する「テストステロンブースター」の一種として注目されています。

テストステロンが筋肉や男性機能の強化に役立つことはご存知の方も多いでしょう。

D-アスパラギン酸は精巣の中でのテストステロンの合成分泌を促進するだけでなく、メラトニン(松果体ホルモン)、プロラクチン(下垂体ホルモン)の分泌も促進します。[1] 

なお、アスパラギン酸にはL―アスパラギン酸もありますが、体内で果たす役割が異なり、味も違う成分です。

D-アスパラギン酸はホルモンの分泌に影響し、L―アスパラギン酸はタンパク質の構成部分。

D-アスパラギン酸には甘みがあり、L―アスパラギン酸には苦味があります。 

この記事では、D-アスパラギン酸の様々な臨床データや効果についてご紹介しましょう。

 

Dーアスパラギン酸はテストステロンブースターか?

テストステロンを増やす?「テストフェン」の効果と副作用とサプリ

イランのイスファハーン大学などの研究者が2017年に行なった研究レビューでは、D-アスパラギン酸のテストステロン増加に関する23件の動物実験と、4件の臨床試験の結果を確認しました。

その結果、D-アスパラギン酸摂取でオスの動物の体内のテストステロン濃度が上昇したという結論に。

しかし、人間の男性の体内では必ずしもテストステロンが上昇するとは限らない、という評価になっています。[2]

どういうことか、個々の試験結果を確認してみましょう。

2009年にイタリアの研究グループが行なった臨床試験では、27歳から37歳の23人の男性が12日間3.12gのD-アスパラギン酸ナトリウムを飲んだところ、血液内のテストステロン濃度が平均4.5ng/mlから6.4ng/mlに増え、42%も上昇しました。

しかも摂取をやめて3日たった後も、テストステロン濃度は5.8ng/mlで、摂取開始前より平均28%高い状態が続いていたそう。

これは、摂取停止後も被験者の精巣内にD-アスパラギン酸が残っていて、テストステロン分泌を促進したためと考えられています。[3]

ちなみに、1ngは10億分の1グラムですので、1ng/mlは1ミリリットル中に10億分の1グラムの濃度を意味します。

一方、D-アスパラギン酸を摂取しても効果はない、とする研究もあります。

2013年、アメリカのベイラー大学の臨床試験では、20人の若い男性を10人ずつの2グループに分けて、28日間毎日3gのD-アスパラギン酸またはプラシーボ(偽薬)を飲みつつウェイトトレーニングをしてもらう、という試験を行いました。

しかし、テストステロン濃度、筋肉量、筋力等でD-アスパラギン酸摂取の効果はなかったそうです。[4] 

また2015年、アメリカのメンフィス大学の研究グループは、10人の肥満または糖尿病の中年男性(平均年齢42歳)に28日間D-アスパラギン酸3.12gと硝酸塩とビタミンD3を含むサプリを飲ませて効果を調べました。

すると、10人中5人の体内のテストステロン濃度が上昇。

ただし、この論文では、上昇幅は統計上有意と言えるほどテストステロン濃度は上昇していない、と評価しています。

研究グループによれば、被験者の人数がわずか10人だったためで、統計的にはっきりした結論を出すには180人程度の被験者が必要とのことです。[5]

ちなみに、上記サプリを1日1回飲んだ5人の体内のテストステロン総量(TT)は平均で2.6ng/mlから2.9ng/mlに、1日2回飲んだ5人は平均2.9ng/mlから3.1ng/mlに増加していました。

計算すると、10人全体の試験前のテストステロン総量平均は2.75ng/mlから3.0ng/mlに増えたことになり、平均約9%の増加です。

効果がなかった5人を除いて効果があった5人だけを考慮すれば、テストステロン総量平均は2.75ng/mlから3.25ng/mlに増えて差し引き0.5ng/mlの増加となり、約18%の増加となります。

 2015年のウェスタンシドニー大学の臨床試験ではもっと否定的な結果が出ました。

被験者24人は最低2年以上のトレーニング歴がある男性で、平均年齢24.5歳、トレーニング歴平均3.4年、平均身長178.5cm、平均体重84.7kg、ベンチプレス最大平均105.3 kg。

この24人が8人ずつの3グループに分かれ、それぞれプラシーボ(偽薬)、D-アスパラギン酸3gまたは6gを14日間毎日飲みつつ週4日のペースでトレーニングを行いました。 

すると驚くべきことに、毎日D-アスパラギン酸を6g摂取したグループのテストステロン総量平均は5.85ng/mlから5.12ng/mlに減少し、3g摂取したグループでも6.95ng/mlから6.91ng/mlに微減していました。

皮肉なことに、6gの小麦入りカプセルを飲んだプラシーボ(偽薬)グループのテストステロン総量平均だけが6.03ng/mlから6.07ng/mlに微増。[6]

以上が2017年イランの研究レビューで検討された4件の臨床試験です。

さらに2017年、ウェスタンシドニー大学の別の研究グループによる臨床試験も、D-アスパラギン酸の効果に対する疑問を示しています。 

この研究では平均年齢23.8歳、トレーニング歴平均3.2年の男性22人を二手に分け、12週間にわたってD-アスパラギン酸6gまたはプラシーボ(偽薬)として同量の米粉を飲みつつ筋トレをしてもらいました。

この研究の目的は、2015年のウェスタンシドニー大学の上記研究を踏まえて、D-アスパラギン酸が筋トレ経験者に対して長期的効果があるのか検証することです。

データを確認すると、D-アスパラギン酸を飲んだグループのテストステロン総量平均は、試験開始時に5.7ng/mlから6週間後に5.9ng/mlに微増しましたが、12週間後には5.3ng/mlに減少していました。

なお、プラシーボ(偽薬)を飲んだグループでも、6.1ng/mlから6週間後に6.3ng/mlに微増した後6.0ng/mlに減少しています。

また、被験者の両脚の筋肉量(太ももやふくらはぎなど)を調べたところ、両グループとも大きくなっている部分はありましたが、D-アスパラギン酸使用グループに特別な優位は見られませんでした。

筋力についても、研究グループはシーティッド・カーフレイズ(STCR)という運動の成績を紹介し、両グループとも同等の改善が見られると評価しています。

以上から研究グループは、D-アスパラギン酸は筋トレで鍛えられた男性のテストステロンレベル改善のためには非効率的なサプリであると結論付けたのです。[7]

以上、D-アスパラギン酸のテストステロンブースターとしての効果を巡っての論争をご紹介しました。

果たして、D-アスパラギン酸には摂取する価値があるのでしょうか?

 結論から言うと、サプリによくあることですが人によります。

特にテストステロン不足が気になる人や他のテストステロンブースターで効果が得られなかった人は試す価値があるでしょう。

実は、上記研究の内D-アスパラギン酸の効果があったのは、テストステロン平均が少ない被験者グループでした。

一方、効果がないとされた試験の被験者グループは若くて3年前後のトレーニング歴があり、テストステロン値も高いグループ(テストステロン総量平均6ng/ml前後)ばかりです。

2015年のウェスタンシドニー大学の臨床試験ではD-アスパラギン酸を飲むとテストステロンはかえって減ってしまいましたが、研究グループは試験ごとの被験者のテストステロン平均値の差に気づいており、D-アスパラギン酸はテストステロン値が低い被験者には効果があったのではないかと推測しています。[8]

2017年のウェスタンシドニー大学の論文でも十分トレーニングしていない男性に対する過去の研究を認め、D-アスパラギン酸は高齢者などテストステロンが不足している男性には効果があるかもしれない、としました。

また、女性のD-アスパラギン酸の効果が男性とは異なる可能性にもふれています。[9]

D-アスパラギン酸のテストステロンとの関係は複雑なようですので、テストステロンブースターとしての機能についてはさらなる科学的検証が必要といえるでしょう。

しかし面白いことに、テストステロンブースターに期待される効果についてはある程度検証が進んでいますので、ご紹介いたします。

 

D-アスパラギン酸の効果5つ

では、D-アスパラギン酸のテストステロン以外にも得られる具体的な効果について、論文をもとに見ていきたいと思います。

 

1.トレーニング効率アップ

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 テストステロンブースターを使用する目的の一つは筋トレの効率アップですよね。

D-アスパラギン酸には筋トレの効率アップが期待できる試験結果があります。 

先述のメンフィス大学の臨床試験(2015年)では、10人の中年男性被験者に5段階評価のアンケートを行なったところ、28日後の運動の効率、筋力、筋持久力の自己評価平均値が向上していました。[10] 

また、2017年のウェスタンシドニー大学の臨床試験では、研究グループは同様と評価していますが、シーティッド・カーフレイズ(STCR)の成績はプラシーボ(偽薬)グループより改善しています。

シーティッド・カーフレイズは膝を 90°に曲げて座りながらスミスマシンのバーを膝の上に置き、踵を高く上げてつま先立ちする運動です。

D-アスパラギン酸摂取グループでは試験後のテストステロン総量は減ったはずですが、12週間で最大筋力(MVC)が平均243.6N.m(ニュートンメートル)から287.6N.mに増加し(44N.m増)、10RM(10回動かせる最大筋力)も平均31.3から53.7に増加(22.4増)しました。

一方プラシーボ(偽薬)摂取グループの成績は最大筋力(MVC)が平均264.3N.mから293.0N.mに増加(28.7N.m増)、10RMが平均33.9から47.8への増加(13.9増)にとどまり、改善の絶対値も改善率も劣っています。[11] 

テストステロンブースターとしての正確なメカニズムが不明とはいえ、D-アスパラギン酸は中年男性にも若いトレーニング上級者にも筋トレでの効果がありうるのですから、試してみる価値は大いにあるでしょう。

 

2.男性機能改善

D-アスパラギン酸にはテストステロンに期待される男性機能改善効果があるとも確認されています。

2012年、アメリカのバリー大学では、精子欠乏症の30人と精子無力症の30人にD-アスパラギン酸ナトリウムを90日間服用させました。

すると、精子濃度も精子運動率も平均で約50%以上改善

その成果は「D-アスパラギン、精子の品質改善のためのキーエレメント」というタイトルの論文で発表されています。[12] 

また、ナポリ第二大学を中心とする研究グループは、D-アスパラギン酸は脊椎動物の精巣内でのステロイドや精子生成をコントロールするとして、2016年にD-アスパラギン酸の細胞レベルでの働きをレビューしました。[13]

なお2015年のメンフィス大学の臨床試験でも、D-アスパラギン酸摂取後の被験者は性的欲求が高まったというアンケート結果が出ています。[14]

 

3.生殖能力改善

男性機能改善は生殖能力改善にもつながります。

2005年にイタリアのサンルカ医院の研究グループが、健常者10人の精液中のD-アスパラギン酸平均濃度が精子欠乏症の10人と精子無力症の10人よりも高いことを突きとめ、D-アスパラギン酸の濃度は生殖能力とも関係がありうるという見解を発表しました。[15]

2012年、アメリカのバリー大学の臨床試験ではD-アスパラギン酸を摂取した被験者のパートナーの妊娠増を報告してこの見解を裏付けています。[16]

D-アスパラギン酸は、女性の生殖能力にも影響があるという研究も。

2007年にサンルカ医院の研究グループが女性20人の卵胞液(卵子を包む卵胞内部の液体)を調べたところ、若い女性グループの卵胞液のD-アスパラギン濃度が35歳以上のグループより高く、卵胞液仲のD-アスパラギン酸濃度と卵母細胞の品質や妊娠率には関連があると明らかになりました。[17]

以上がテストステロンブースター関連の効果ですが、D-アスパラギン酸には他の効果も期待されているので簡潔にご紹介いたします。

 

4. 精神疾患の治療

ストレスに悩む男性

イタリアの研究機関CEINGEを中心とする2008年の研究[18]、イタリアカンパーニャ大学を中心とする2017年の研究[19]などでは統合失調症やうつ病の症状を改善するために、ネズミにD-アスパラギン酸を摂取させる実験が行われています。

  

5. 記憶力と学習能力改善

 2010年にイタリアの研究機関SZNがネズミを対象に行なった実験の結果から、D-アスパラギン酸が記憶や学習能力に重要な役割を果たすと結論付けました[20]

2021年にハンガリーのセンメルヴェイス大学の実験で、D-アスパラギン酸入り飲料水を飲んだネズミがモーリス水迷路試験(MWM)で好成績を修める[21]など、D-アスパラギン酸の記憶や学習能力改善効果が注目され、研究が進んでいます。

 

D-アスパラギン酸はテストステロンブースターとして期待大

いかがでしたか?

D-アスパラギン酸はテストステロンブースターとして期待されていますが、現在までの臨床データでは、テストステロン濃度が上昇したのは体内のテストステロン値が低めの男性に限られています。

しかし一方で、テストステロン値が高い20代男性のトレーニング結果を改善した事例もあり、男性機能の改善や生殖能力向上での効果を示す臨床データも十分 

D-アスパラギン酸とテストステロン濃度の関係は複雑ですが、その効果には注目されているので、もっと多くの被験者に対する臨床試験が行われてメカニズムが解明されると思われます。

副作用については、ある臨床試験では一部被験者がイライラ、頭痛、緊張感などを訴えましたが、プラシーボ(偽薬)グループでの同様の訴えがあったため、この試験だけの問題と思われます。[22]

また、1日2.6gのD-アスパラギン酸を90日間摂取し血液検査を行なった実験では問題がなかったため、比較的安全な成分であると言えます。[23]

 

D-アスパラギン酸は日本で購入できる?

残念ながらD-アスパラギン酸の国産サプリは販売されておりません

しかし、海外製品であればAmazonで購入できます。

ちなみに、D-アスパラギン酸については「海外製だから危険」という訳ではありません。

日本のAmazonでは日本で医薬品指定されている成分が入ったサプリは販売できないので、販売されている時点で一定の安全性は保証されていると言えます。

臨床試験をふまえると、摂取の目安は1日3g程度と思われます。

筋トレ効果、男性機能改善、生殖能力向上を望むなら、テストステロンブースターとして期待されているD-アスパラギン酸を試す価値は大いにあるでしょう。

 

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