ベータアラニンは筋トレに効果的?

公開日:2022/05/18
更新日:2022/05/30

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      今、日本でベータアラニンのサプリが注目を集めています。

      欧米のスポーツ界では早くから注目され、国際スポーツ栄養学会(ISSN)や国際オリンピック委員会(IOC)にも認められている成分ですが、日本では医薬品での使用だけが認められていました。

      しかし2019年3月に厚生労働省が食品市場での使用も認可したので、日本でもサプリなどでのベータアラニン摂取が可能になりました。

      これから日本のスポーツやフィットネスの世界でも、ベータアラニンを使う人と使わない人の間に大きな差がつくかもしれません。

      そこでこの記事では、ベータアラニンの性質と働き、筋トレへの効果、副作用などについてご紹介します。

       

      ベータアラニンとは?

      ベータアラニンは、アミノ酸の一種です。

      体内で自然に合成され食物から摂取する必要がないため、非必須アミノ酸に分類されます。ですが、筋肉の中でL-ヒスチジンとともにカルノシンという成分を合成する重要な役割を果たしています。[1]

      運動中筋肉の中ではグルコースが分解(解糖)されてエネルギーになり、乳酸が発生するのは知られていますね。

      すると乳酸によって酸性度が高り、グルコースの分解が阻害され、筋肉は疲労します。

      この時、筋肉内のカルノシンは乳酸の蓄積を抑えて筋肉疲労を遅らせます。[2]

      普通体内ではベータアラニンの方がL-ヒスチジンより少ないため、ベータアラニン不足がカルノシン合成の制約に。

      そこで筋肉の質と量を改善したい人は、カルノシンをもっと合成するためにベータアラニンをサプリなどで摂取するのです。

      実際、1985年のベルギーのゲント大学の研究では、アスリートたちが4週間毎日4.8gのベータアラニンを経口摂取したところ、筋肉内のカルノシンは約37~47%増加しました。[3]

      イギリスのチチェスター大学の2007年の実験でも4週間のベータアラニン摂取で筋肉中のカルノシンは58.8%、10週間で80.1%も増えました。[4]

       

      ベータアラニンの効果6つ

      では、ベータアラニンの働きでカルノシンが増えるとどのような効果があるのでしょうか?

      欧米の研究成果をくわしく見ていきましょう。

      1.長時間トレーニングできる

      ベータアラニンを摂取すると、疲労を防いで長時間のトレーニングが可能になることが分かっています。

      2007年、イギリスのチチェスター大学は、13人の男性にベータアラニンサプリを摂取しつつサイクリングテストを受けてもらい、運動量を調べました。

      すると、4週間後には疲労困憊するまでの全運動量が13%、10週間後にはさらに3.2%増加していました。[4]

      2012年イギリスのノッティンガム・トレント大学の文献レビューでも、ベータアラニンを摂取した結果、サイクリングテストでの疲労限界時間(TTE)が10%以上改善したことが明らかになっています。[5

      ベータアラニン摂取で一回のトレーニング時間を増やせば、その分筋トレの効果も高まりそうですね。

       

      2.主観的な疲労度も改善

      ベータアラニンには主観的な疲労の感覚を和らげる効果もあります。

      2008年のニュージャージー大学の研究では、大学のフットボールプレイヤーに3週間にわたって毎日4.5gのベータアラニンを服用した後、短時間の各種高強度運動をしてもらい、その効果を調査しました。

      すると、60秒間のウィンゲートテストで疲労度が低下し、ベンチプレスなど全てのレジスタンス運動でトレーニング量が増加しただけでなく、アンケートでの主観的な疲労度も大幅に改善していました。[6]

      ベータアラニンを飲めば、筋トレの心理的なつらさも緩和されそうですね。

       

      3. 短時間の高強度運動も改善

      ベータアラニンは高強度運動でも効果を発揮します。

      1985年、ベルギーのゲント大学の実験では、18人のボート選手が7週間毎日5gのベータアラニンを摂取したところ、体内のカルノシンが増加し、2000mの漕艇テストのタイムが4.3秒改善しました。[7]

      2013年のノッティンガム・トレント大学でも、20人のボート選手が4週間6.4gのベータアラニンを摂取し、2000mの漕艇テストを受けて効果を検証したところ、タイムが6.4秒改善しました。

      また、ベータアラニンと重曹(重炭酸ナトリウム)を一緒に服用したグループは、さらに1.1秒改善しています。[8]

      ベータアラニンは激しい運動に耐えられる筋肉を作ることが分かります。

       

      4. 筋肉量が増大

      ベータアラニンを摂取してトレーニングすると、筋肉量も目に見えて増加します。

      アメリカコロラド州のアダムズ州立大学による2011年の研究では、大学のレスリング選手22人とフットボール選手15人に毎日4gのベータアラニンをカプセル入りパウダーで服用してもらい、300ヤード(約274m)のシャトルランテストを行いました。

      その結果、8週間ベータアラニンを摂取し続けたフットボール選手のシャトルラン平均タイムはプラシーボ(偽薬)グループより0.7秒改善し、除脂肪体重でも1ポンド(約453g)多い2.1ポンド(約952g)の増加が見られました。

      レスリング選手の場合、両方のグループの体重が減少しましたが、プラシーボ(偽薬)グループの除脂肪体重が0.98ポンド(約444g)減少したのに対し、ベータアラニンを摂取したグループは1.1ポンド(約498g)増加していました。[9]

      ベータアラニンの効果を知らないままだと、運動能力だけでなく筋肉量でも他の人に大きく差をつけられそうです。

       

      5. 走力を高める

      ベータアラニンを摂取すると、反復性スプリント能力、つまり繰り返しダッシュする能力を高めることもできます。

      2019年、サンパウロ大学などのブラジルの研究グループは18人の男性に毎日6.4gのベータアラニンを摂取しつつランニングをしてもらいました。

      すると6週間後には、ベータアラニンを摂取したグループの筋肉内のカルノシンは摂取しなかったグループより約50%多くなり、反復スプリント運動(35mランを6回×2セット)のタイムも3%改善しました。[10]

      テニス、ラグビー、サッカーの選手など、走力を向上させたい人もベータアラニンを活用すべきでしょう。

       

      6. 高齢者の持久力向上

      ベータアラニンの効果はスポーツ選手のパフォーマンスを向上させるだけではなく、高齢者の筋肉の持久力を高める働きもあります。

      2008年のオクラホマ大学の研究では、55歳から92歳の26人の男女に800mgのベータアラニンを90日間毎日3回服用してもらい、サイクリングの運動負荷試験を行いました。

      すると、プラシーボ(偽薬)を服用したグループには変化がありませんでしたが、ベータアラニンを服用したグループの運動能力は28.6%も改善していました。[11]

      持久力向上が高齢者の日常生活の質を高めることは間違いないでしょう。

       

      ベータアラニンフラッシュとは?安全?

      ベータアラニンはどのように、どれくらい摂取したらよいのでしょうか?

      実はベータアラニンは肉や魚に含まれ、多くの人が日常の食事で摂取しています。

      したがって、ベジタリアンの人はそうではない人に比べ、筋肉中のカルノシンが少なくなります。

      2007年にイギリスのチチェスター大学を中心とする国際研究グループが卵や牛乳を摂取するベジタリアンと肉食する人たちの筋肉を調べた結果、ベジタリアンの筋肉に含まれるカルノシンはそうではない人の50%程度にとどまることが分かりました。[12]

      しかし肉を食べる人の体内でも、L-ヒスチジンがあまっています。

      効率的に筋トレしたいなら、ベータアラニンをサプリで摂取してカルノシンを増やした方が賢明ですね。

      妥当な摂取量については、国際スポーツ栄養学会(ISSN)が2015年にそれまでの研究成果を踏まえて見解を示しています。

      それによると、1日4~6gのベータアラニンを1回2g以下に分けて飲み続けると、筋肉中のカルノシンが2週間以上で20~30%、4週間で40~60%増加するとのことです。[13]

      しかし、ベータアラニンは安全なのでしょうか?

      副作用が気になる人もいるのではないでしょうか?

      国際スポーツ栄養学会は上記レビューでベータアラニン摂取の副作用として、「ベータアラニンフラッシュ」に言及しています。

      これは、ベータアラニン摂取により、顔、首、背中、手足などがピリピリ、チクチクする症状です。

      しかし、ベータアラニンが有害であるという研究はないとのことです。

      またベータアラニンフラッシュは、800mg以上のベータアラニンを摂取して15分ぐらい経ってから始まりますが、60~90分でおさまるとのことです。

      ベータアラニンは元々人体で自然に作られる成分で、医薬品でも使われています。

      各自の体調に合わせて一回の容量を調整し、過剰摂取しなければ特に問題はないでしょう。

      ※記事の内容は、効能効果または安全性を保証するものではありません。サイトの情報を利用し判断及び行動する場合は、医師や薬剤師等のしかるべき資格を有する専門家にご相談し、ご自身の責任の上で行ってください。

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