【筋肉の進化】重さ50トンもの首長恐竜を支えた筋肉のひみつを探る

公開日:2022/03/04
更新日:2022/03/03

  • 記者 WRITER
    Cattano

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    みなさんは筋肉がどのように進化してきたかをご存知でしょうか?

    もしかすると筋トレに励んでいる方は筋肉にお詳しいかもしれません。

    筋肉はどのような構造を持っていて、どのように肥大していくかなど。。。

    最近ではそうした紹介は本やネット上で多く見られます。

    今回は、角度を変えて恐竜の筋肉についての最新研究をみなさまにご紹介するとともに、筋肉の進化についてお話ししましょう。

    また、最後には古典的な遺伝のことでなく、後天的に決まる筋肉遺伝子のはたらきを紹介することで締めくくりたいと思います。

    すべて遺伝子で決まるのでは筋トレのやりがいがありませんものね?

    参照記事:https://scitechdaily.com/muscular-study-reveals-how-giant-50-ton-sauropod-dinosaurs-moved-and-evolved/ 

    では、さっそく研究を紹介しましょう。

    2022年1月19日、”Royal Society Open Science”に発表された論文で、三畳紀に地球上に生息した大型の首長恐竜が小型の恐竜からいかにして進化してきたかが明らかにされました。

    首長恐竜といえば、映画『ジュラシックパーク』で登場したブラキオサウルスがその典型例と言えるでしょう。

    首長恐竜は学術的には竜脚類(Sauropod dinosaurs)と呼ばれ、小さな頭・長い首と尾という特徴的な形質を持ちます。

    その重量は50 tにもなるといわれていますが、もともとは現在の大型犬ほどのもっと小さな恐竜から進化したと考えられています。

    竜脚類の祖先であるこの小さな恐竜はテコドントサウルス(Thecodontosaurus)と呼ばれ、最も古く化石が発見された恐竜の一つです。

    論文の筆頭著者であり、ブリストル大学(英国)で恐竜を研究するAntonio Ballellは「本大学ではテコドントサウルスの化石を多くコレクションしています。しかも、化石はブリストルで見つかるので、状態が大変良いのです。状態が良いということは、当時の筋肉組織が骨格にどのように結合していたかがそこからわかるということを意味します」と語りました。

    「この状態の良い化石を用いて骨格や筋組織を数理モデルなどで再構成することができます。その結果、すでに絶滅した動物がどのように筋肉を使って歩いていたかをシミュレーションすることで理解することができるのです」とAntonioは続けて説明しました。

    今回の研究のように、生物学的なデータを数理モデルと組み合わせて解析することが近年ではよくなされます。

    数理モデルを立ててシミュレーションすることで、どのパラメータが重要であるかが明確になるのです。

    今回の例では筋肉量やその伸縮率の違いがわかることがあります。

    ここまでで、化石の研究により当時の恐竜がどのように筋肉を使っていたかを知ることができるのはわかりました。

    ですが、これだけではありません。

    科学というのは比較によって進歩するもので、今回の研究もその例外ではありません。

    Antonio Ballellは、どのように大きな竜脚類が進化したのかはまだはっきりとしないとしながらも、恐竜の比較研究について以下のように説明しました。

    「今日、恐竜というのは鳥類とワニ類と近縁で、”主竜類”として同じ進化的グループとしてまとめられることが明らかとなっています。つまり、恐竜はこの中で唯一絶滅した系統ということです。恐竜の化石に残った痕跡をたどりつつ、現存する鳥類あるいはワニ類の骨格と比較することで、恐竜の筋組織が再構築できるようになります。その結果、テコドントサウルスはとても俊敏で、前脚を歩くためというよりかは物をつかんだりすることに使っていることが示唆されました。これは、前脚を歩くために使っていた竜脚類(首長恐竜)とは異なるという発見なのです」

    現在、二足歩行のテコドントサウルスが、どのように四足歩行の(それも巨大な)竜脚類に進化したのかははっきりとしていません。

    しかし、巨体を支える筋肉の進化の謎が解ければ、現在の実生活にも応用は効きそうです。

    近年では、科学技術の進歩から、化石からもDNAを抽出したという研究があります。

    テコドントサウルスと竜脚類のDNAが抽出できれば、筋肉に関わる遺伝子を比較することで、どのように進化したかがわかるかもしれませんね。

    今回は、首長恐竜の筋肉についての研究を紹介しました。

    この謎が解明すれば、将来あなたの筋トレにも役立つのかもしれません。

    最近では、筋トレをすることで遺伝子の配列自体は変わりませんが、その修飾(エピジェネティクス)が変化することで、筋肉を増加させる遺伝子が活性化することが明らかになっています。

    これは、遺伝子そのものは努力で変わりませんが、筋トレをすることで遺伝子の発現を変えられることを意味します。

    ですから、みなさんは恐竜の筋肉増大の謎が晴れるのを気長に待ちながら、目の前のトレーニングに集中するのが良いかもしれませんね。

     

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    • 記者 WRITERCattano

      大学時代は国立理系に在籍しながら、目標のTOEIC900点に到達。専門知識をフルに活用して抽出した”正確な科学的根拠”にもとづいて、知的好奇心をくすぐるような記事をわかりやすく読者の皆さまにお届けします。趣味の海外旅行はコロナで自粛中。。。

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