イカリソウの効果とは?研究データから分析

公開日:2023/05/27
更新日:2023/06/03

中国では古くから精力増強の漢方として親しまれてきたイカリソウ。
近年では精力以外にもさまざまな効能があるとして、世界中で注目されてきています。
今回は研究データをもとに、イカリソウがもたらす6つの健康効果をご紹介しましょう。

  • 記者 WRITERSTERON編集部
    ニュース担当

イカリソウとは?

イカリソウ

「イカリソウ」という植物をご存知ですか?

船のイカリのような花を咲かせるので、日本ではこの名がつきました。

小さな花が下にたれる様子がかわいらしい植物です。

漢方では滋養強壮などに有効な生薬として活用され、日本でも医薬品に分類されています。

古来中国では羊が食べると精力絶倫になるとの言い伝えからインヨウカク(淫羊藿)と呼ばれ、その名の通り強精効果が特に期待されてきたそうです。

英語でも「欲情した羊の草」という意味でホーニー・ゴート・ウィード(horny goat weed)と呼ばれ、ED(勃起不全)対策で期待されています。

 しかし、イカリソウの効能はそれだけではありません。

どんな効果があるか研究データで確認してみましょう。

 

セイヨウイカリソウの効果6つ

 それでは、イカリソウにどんな効果があるのか見ていきましょう。

実際の研究データも併せてご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

 

1.勃起力を改善する

イカリソウの勃起力改善効果は現代医学でも立証されています。

2008年のミラノ大学の研究によると、有効成分はイカリインと呼ばれるフラボノイド。

ペニスの血管を収縮させるPDE5A1という酵素を抑制して勃起力を改善します。

特にイカリインの分子の一部を変更した3,7-ビスイカリチンはイカリインの80倍、バイアグラの有効成分シルデナフィルと対等の効果を発揮するとのこと。[1]

さらに、クルージュ=ナポカ農業科学獣医学大学とバベシュ・ボーヤイ大学(ルーマニア)の共同レビューによると、イカリソウエキスを摂取したラットの体内ではイカリインの効果でテストステロン分泌量が増えたそうです。[2]

2013年のチュラーロンコーン大学(タイ)での臨床試験では、勃起不全の男性61人がイカリソウ1.5%配合錠剤を毎日3錠摂取しつつ、国際勃起機能スコア(IIEF)を記録しました。

すると2週間後には勃起機能が4.87、性的絶頂が1.15、性欲が0.75、性交満足度が2.3、全体的満足度が1.49改善。

全ての項目でプラセボ(偽薬)使用時を上回りました。[3]

インヨウカク(淫羊藿)という中国名はだてじゃないようです。

 

2.喫煙者の肺や呼吸機能を守る

イカリソウは精力剤としての効果が注目されがちですが、喫煙者の肺への健康効果は盲点かもしれません。

慢性閉塞性肺疾患(COPD)という聞きなれないですが、要注意の病気に対する効果が報告されているのです。

日本呼吸器学会によると、この炎症性疾患はタバコの煙など有害物質を長期間吸い込むことで発症します。

体を動かした時の呼吸困難や慢性のせきやたんが特徴で、恐ろしいことに日本人の死亡原因の9位を占めるのだとか。

しかし大多数が診断も治療も受けておらず、特に喫煙者の健康にとって盲点というべき病気のようです。[4]

このCOPDには、イカリソウが効果的。

2012年に中国人民解放軍第323医院(陝西省西安市)では、平均年齢81歳のCOPD患者に対するある飲み薬の効果が検証されました。

被験者中26人が飲んだのは、ナガイモの根から作られた生薬サンヤク(山薬)30gとイカリソウ12gを配合した160mlの飲み薬です。

試験前には26人のSGRQスコアの平均値は50点台でしたが、3か月後には症状、活動、衝撃の項目全てが20~30点台に改善し、総合スコアは55.3から32.7まで改善しました。

一方プラセボを飲んだ23人は試験前のスコアもほぼ同じ50点台でしたが、3か月後も全項目でほとんど変化がなく、総合スコアは53.5から54.7に悪化してしまいました。[5]

イカリソウの効果はCOPD限定ではありません。

ぜんそく治療で研究されている生薬の喘可治は、イカリソウとアカネ科の巴戟天(はげきてん)という薬草を主成分としています。

上海第二医科大学では、2004年にぜんそく患者児童68人に対する臨床試験が行われました。

試験終了後、喘可治摂取グループとプラセボ摂取グループの症状スコア平均は6.0対10.0、最大呼気流量(PEF)の変化は4.3対5.9となり、喘可治摂取の効果が示されています。[6]

上海交通大学医学部では、2021年から喘可治の成分とぜんそく治療のターゲットとなる遺伝子の関係を特定し、その効能を科学的に解明する試みを始めました。[7]

イカリソウは呼吸器関連でもますます活用されていくと思われます。

 

3.抗がん作用

現代医学によって、イカリソウには抗がん効果もあるとわかってきました。

2023年の遵義医科大学(中国)のレビューによると、有効成分イカリインはがん細胞の増殖や転移を抑制する一方、がん細胞の死を促進するとのこと。

その作用は大腸がん、食道がん、胃がん、白血病、肝細胞がん、すい臓がん、子宮がんなど、多種多様ながんに及ぶものです。[8]

2015年の日本の愛知医科大学と岐阜薬科大学の共同研究では、前立腺がんに対する効果も明らかになっています。

この研究ではイカリソウから9種類の成分を抽出し、前立腺がん細胞の培養液に別々に投与した上で、24時間後のがん細胞の生存率を比較しました。

その結果、3種のイカリチン派生物によってがん細胞の生存率は半分以下に低下

特にイカリシドIIというフラボノイドは生存率を25%以下におさえ、前立腺がん治療薬ビカルタミドに匹敵する効果を発揮しました。[9]

 

4.骨や関節の健康を守る

イカリソウは骨や関節の病気でも効果が期待できます。

2009年の香港中文大学の臨床試験では、イカリソウ由来フラボノイドの骨密度改善効果を検証しました。

平均年齢64歳の閉経後女性43人がカルシウム300mgとともにイカリイン60mg入りのカプセルを摂取し続けたところ、24か月後には大腿骨頚部(腰骨につながる首のような部分)の骨密度が1.6%、腰椎(背骨の腰に近い部分)の骨密度が1.3%改善。

一方、平均年齢63歳の42人がプラセボとカルシウム300mgを摂取し続けると、24か月後には大腿骨頚部の骨密度は1.8%、腰椎は2.4%も悪化してしまいました。[10]

イカリソウは関節リウマチ治療でも期待されています。

2021年の吉林大学では、軟骨を破壊するFLSという細胞(線維芽細胞様滑膜細胞)をイカリイン2.5μM以上を含む溶液で培養すると増殖が抑制され、転移も通常の半分以下におさえられると判明。[11]

ここでも漢方の知見が科学的に裏付けられました。

 

5.血管や心臓を保護する

イカリソウは血流改善の効果があるとされてきましたが、現代医学でも血管や心臓を保護する成分を含むことが解明されています。

2022年の遵義医科大学の最新レビューによると、イカリイン、イカリシドII、イカリチンが血管や心臓の保護機能で有効とする研究が蓄積されているそうです。

これら3種類のフラボノイドは3方面で効果を発揮します。

まず、血管の硬化や詰まりをもたらす血管平滑筋細胞 (VSMC)の異常増殖を抑制し、血管の内側の細胞(内皮細胞)を保護して血管を拡張することで、高血圧や動脈硬化を防ぎます。

また、心筋細胞の発生を促し、細胞死を抑制して心臓へのダメージも緩和。

さらに抗炎症作用を発揮して「泡沫細胞」発生を抑制し、動脈硬化や心臓病のリスクを減らすのだそうです。[12]

北京大学を中心とする研究グループによる2022年の最新研究では、人間のへその緒の静脈の内側の細胞(HUVEC、ヒト臍帯内皮細胞)を使ってそのメカニズムをさらに解明しました。

HUVEC細胞をイカリシドIIの溶液で培養すると、1,000万分の1~100万分の1モル(10-7~10-6M)の濃度では、48時間後に細胞が大幅に増殖。

さらに、細胞内でeNOSという一酸化窒素を合成する酵素が活性化されることも判明しました。

一酸化窒素は血管の内側(血管内皮)で抗炎症、抗酸化作用を発揮し、血栓も抑制して血管を保護します。[13]

こうしてイカリソウの血流改善効果も立証されました。

 

6.神経系の効果にも期待

イカリソウには神経の保護やダメージ回復を促進する効果もあるとわかっており、神経系の病気の治療でも期待が高まっています。

有効成分イカリインは、大脳皮質のニューロン細胞や副腎皮質細胞など、脳の細胞を神経毒から守ることがわかってきました。

さらに、アルツハイマーのラットの学習能力や記憶力を改善したとも報告されています。

同済大学(中国)の研究グループはこうした成果を踏まえて、2016年にイカリインをさらに詳細に分析し、89種のアルツハイマー病関連たんぱく質に効果があると報告しました。[14]

2021年には北西大学などの大学研究グループもイカリソウを詳細に分析し、19種類の成分がうつ病治療で期待できると評価しています。

その中でもケンフェロール、ルテオリン、ケルセチンはすでにうつ病治療効果が立証されており、炎症サイトカインTNF、ドーパミン、プロラクチンなどうつ症状に影響する複数の経路に働きかけるとのこと。[15]

神経系の治療でも、イカリソウ活用のさらなる活用が求められています。

 

イカリソウは規格化されたサプリで摂取しよう

以上、研究データからイカリソウの様々な効果をみてきました。

男性機能向上、骨の健康、血流改善など昔から信じられてきた効果が科学的に裏付けられただけでなく、呼吸器の保護、抗がん、アルツハイマー病など新たな領域が開拓されているのがわかりましたね。

安全面も特に問題はありません。

2019年のシンガポール国立大学の臨床試験では、30人の男性が最大1,110mgのイカリソウエキスを摂取しても副作用がなかったそうです。[16]

ただし、2014年のハートフォードシャー大学(イギリス)とGダヌンツィオ大学(イタリア)の共同レビューによれば、男性機能向上サプリを摂取した66歳男性が不整脈と同時に性的に不適切な言動、いらだち、多弁など軽躁病的症状を生じた例があるとのこと。

77歳男性に発疹が起こった事例もあります。[17]

どんな成分も人によって効果に差があるので、体調に合わせて摂取量を調整すべきですね。

摂取方法については、日本では医薬品とされますから、信頼できるメーカーが規格化したサプリを摂取するのが無難でしょう。

イカリソウは幅広い用途で効果が期待できますが、男性機能向上と肺の健康が気になる喫煙者には特におすすめの成分と思われます。

 

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